東北の企業が「退職面談」から組織改善のヒントを得る方法——辞める人の声に耳を傾けることが、残る人の環境を変える
エンゲージメント

東北の企業が「退職面談」から組織改善のヒントを得る方法——辞める人の声に耳を傾けることが、残る人の環境を変える

#1on1#エンゲージメント#採用#評価#研修

東北の企業が「退職面談」から組織改善のヒントを得る方法——辞める人の声に耳を傾けることが、残る人の環境を変える

「退職届を出された時点で、もう引き留めは無理だと思っています。あとは手続きを済ませるだけ。正直、辞める人にこれ以上時間をかけてもしょうがないと思っていました」

秋田のある商社の社長から聞いた言葉です。私はこの考え方が、東北の中小企業で非常に一般的であることを知っています。

しかし、私はこの考え方は大きな機会損失だと考えています。退職する社員は、組織の問題を最も率直に語ってくれる存在です。在籍中は「言えなかったこと」「言っても変わらないとあきらめていたこと」を、退職が決まった後だからこそ話してくれます。

退職面談(エグジットインタビュー)は、「辞める人を引き留める場」ではありません。「辞める人の声から、組織の改善ポイントを見つける場」です。

退職者の声に耳を傾け、そこから組織の問題を特定し、改善策を実行する。これを続けることで、「次の退職者」を減らすことができます。私がこれまで東北の企業で退職面談の設計と運用を支援してきた経験から、具体的な方法をお伝えします。


退職面談が「組織の健康診断」になる理由

退職者は、在籍中の社員よりも組織の問題を正直に語ります。

在籍中の社員は、上司との関係、評価への影響、同僚との関係——さまざまなしがらみがあるため、本音を話しにくい。エンゲージメントサーベイを実施しても、「無難な回答」をする社員が少なくありません。

退職が決まった社員には、これらのしがらみがありません。「もう辞めるのだから」と、在籍中には言えなかった本音を話してくれることが多い。

宮城のある製造業で、退職面談を1年間実施した結果を紹介します。

退職者12名に退職面談を実施したところ、「直属の上司のマネジメントに問題がある」と指摘した退職者が8名(67%)。「評価基準が不透明」と指摘した退職者が6名(50%)。「成長の機会がない」と指摘した退職者が5名(42%)。

特に「上司のマネジメントの問題」が突出していました。在籍中の社員アンケートでは上司への不満は3割程度でしたが、退職面談では7割近くが指摘している。退職面談でしか見えない問題がある、ということです。

この結果を受けて、管理職向けのマネジメント研修を実施し、1on1面談の制度を導入した結果、翌年の離職率が18%から11%に改善しました。


退職面談の設計——いつ、誰が、何を聞くか

退職面談を効果的に実施するための設計について、具体的に説明します。

いつ実施するか

退職面談のタイミングは「最終出社日の1〜2週間前」が最適です。

退職届を出した直後は、まだ感情的になっている可能性があります。引き継ぎが終わった最終日は慌ただしい。1〜2週間前であれば、冷静に振り返ることができ、かつまだ記憶が新鮮です。

誰が実施するか

退職面談の実施者は、「直属の上司以外の人」が原則です。退職理由が上司との関係にある場合(東北の企業ではこれが最も多い)、上司が面談をしても本音は出てきません。

理想的な実施者は「人事担当者」です。人事担当者がいない小規模企業では、「退職者の直属の上司ではない管理職」または「社長」が担当する。

ただし、社長が実施する場合は注意が必要です。「社長に対して率直に話せるか」は社風によります。社長と社員の距離が近い企業であれば社長が適任ですが、「社長には逆らえない」という風土の企業では、社員は社長に対しても本音を話しません。

何を聞くか

退職面談で聞くべき質問は、「退職理由」だけではありません。以下の5つのカテゴリーで質問を設計します。

カテゴリー1:退職の意思決定プロセス。「転職を考え始めたのはいつ頃ですか?」「何がきっかけでしたか?」——退職の「きっかけ」と「決定打」を分けて把握する。

カテゴリー2:仕事内容と成長。「仕事のやりがいを感じていましたか?」「成長の機会は十分でしたか?」「この会社で身についたことは何ですか?」

カテゴリー3:人間関係とマネジメント。「上司との関係はどうでしたか?」「チームの雰囲気はどうでしたか?」「コミュニケーションに問題はありましたか?」

カテゴリー4:制度と環境。「評価制度に対してどう感じていましたか?」「報酬に対する満足度はどうでしたか?」「働き方(勤務時間、休暇、柔軟性)に対してどう感じていましたか?」

カテゴリー5:改善提案。「もし一つだけ会社を変えられるとしたら、何を変えますか?」「後任者や残る同僚に対して、何かアドバイスはありますか?」

カテゴリー5の質問は特に重要です。「もし一つだけ変えられるとしたら」という質問は、退職者が最も強く感じている問題を引き出すのに効果的です。


退職面談の進め方——本音を引き出す技術

退職面談で最も重要なのは、退職者が本音を話せる雰囲気を作ることです。

冒頭で目的を明確に伝える

面談の最初に、「この面談は引き留めの場ではありません。あなたの経験と意見を、組織の改善に活かしたいと思っています。率直に話していただけると大変助かります」と伝える。

守秘義務を約束する

「この面談の内容は、組織改善のために経営層と共有しますが、誰が何を言ったかは特定されない形で報告します」と守秘義務を明確にする。退職者が安心して話せる条件を整えます。

聞き役に徹する

面談者は「聞き役」に徹します。退職者の発言に対して反論しない、言い訳をしない、否定しない。「なるほど」「そう感じていたんですね」と受け止める。

福島のある建設会社の人事担当者は、退職面談を始めた当初、退職者の指摘に対して「でもそれは○○の理由があって…」と弁解してしまい、退職者が口をつぐんでしまったと振り返っています。「自分の反応を変えて、ひたすら聞くことに徹したら、退職者が驚くほど率直に話してくれるようになった」と語っています。

面談時間は30〜45分

長すぎず短すぎず、30〜45分が適切です。退職者の負担にならない範囲で、十分な情報を収集する。


退職面談の結果を組織改善に活かすプロセス

退職面談を実施するだけでは意味がありません。収集した情報を組織改善に活かすプロセスが重要です。

ステップ1:記録と整理

面談の内容をできるだけ詳細に記録する。退職者の許可を得た上でメモを取り、面談後に整理する。

ステップ2:傾向分析

複数の退職面談の結果を蓄積し、「共通する問題」を特定する。1名の退職者の意見だけで組織を変えるのは早計ですが、3名、5名と同じ問題を指摘していれば、それは組織の構造的な問題です。

ステップ3:経営層への報告

四半期に1回、退職面談の傾向分析結果を経営層に報告する。「誰が何を言ったか」ではなく、「退職者の○%がこの問題を指摘している」という形で報告する。

ステップ4:改善策の立案と実行

特定された問題に対して、具体的な改善策を立案し、実行する。改善策の優先順位は「影響の大きさ」と「実行の容易さ」で決める。

山形のある食品メーカーでは、退職面談の傾向分析から「残業の多さ」が最大の退職理由であることが判明しました。業務プロセスの見直しと人員配置の調整を行い、平均残業時間を月30時間から月15時間に削減。翌年の離職率が大幅に改善しました。


退職面談で注意すべきこと

退職面談の運用で気をつけるべき点を紹介します。

第一に、「すべての退職者に実施する」。特定の退職者だけに面談を行うのではなく、原則としてすべての退職者に面談の機会を提供する。ただし、参加は任意とし、強制はしない。

第二に、「退職者を責めない」。「なぜもっと早く相談してくれなかったのか」「こちらも改善の努力をしていたのに」——こうした発言は、退職者を責めるメッセージとして受け取られ、本音が出てこなくなります。

第三に、「感謝を伝える」。退職面談の最後に、「これまでの貢献に感謝しています。率直に話していただき、ありがとうございました」と伝える。退職者は「最後まで大切にされた」と感じ、退職後もOBOGとして良い口コミを広げてくれる可能性があります。

第四に、「改善を実行したことを残った社員に伝える」。退職面談の結果をもとに改善策を実行したら、「こういう改善を行いました」と残った社員に伝える。「退職者の声がちゃんと組織の改善につながっている」と知ることで、在籍中の社員の信頼が高まります。


退職面談の代替手段——アンケート方式

対面の退職面談が難しい場合は、アンケート方式も有効です。

退職日の1週間前に、メールでアンケートを送付する。質問内容は面談と同じ5つのカテゴリーで構成し、自由記述欄を設ける。匿名で回答できる方式にすれば、対面では言いにくいことも書いてくれる可能性があります。

岩手のある企業では、対面の退職面談とアンケートを併用しています。「面談では話せなかったが、後日アンケートに書いた」というケースもあり、両方の手段を用意することで情報の質と量が向上しました。


退職者との関係は「退職後」も続く

最後に、退職面談の先にある考え方を述べます。

退職者は「去っていく人」ではなく、「自社を知っている人」です。退職後も良好な関係を維持することで、「出戻り採用(アルムナイ採用)」の候補になったり、新しい取引先を紹介してくれたり、採用時の口コミで良い評判を広げてくれたりします。

退職面談で「最後まで大切にされた」と感じた退職者は、退職後も自社に対してポジティブな感情を持ち続けます。逆に、退職時に嫌な思いをした人は、ネガティブな口コミを広げる可能性があります。

東北の中小企業にとって、人材の流出は痛手です。しかし、退職を「損失」としてだけ捉えるのではなく、「組織を改善する機会」として活用する。そして、退職者との良好な関係を維持することで、将来の採用につなげる。退職面談は、その起点になる仕組みだと私は考えています。

0

経営視点で考える人事の実践力を磨きませんか?

書籍『「人事のプロ」はこう動く』著者による実践講座。現場で使える経営視点の人事力を身につけます。

関連記事

東北の企業が新入社員の早期離職を防ぐ方法——「せっかく採用したのに」を繰り返さないために
エンゲージメント

東北の企業が新入社員の早期離職を防ぐ方法——「せっかく採用したのに」を繰り返さないために

4月に3名入社して、7月にはもう1名辞めました。思っていた仕事と違ったと。正直、また同じことの繰り返しかと思いました

#1on1#採用#評価
仙台のコールセンター企業がオペレーター定着率を高める方法——「人が入っては辞める」の悪循環を断ち切るために
エンゲージメント

仙台のコールセンター企業がオペレーター定着率を高める方法——「人が入っては辞める」の悪循環を断ち切るために

毎月5人採用して、毎月3人辞めていく。採っても採っても追いつかない。もう、人事担当者も疲弊しています

#採用#評価#研修
東北の企業が「社内公募制度」で人材の適材適所を実現する方法——「会社が決める配置」から「自分で選ぶキャリア」へ
エンゲージメント

東北の企業が「社内公募制度」で人材の適材適所を実現する方法——「会社が決める配置」から「自分で選ぶキャリア」へ

うちの若手がやりたい仕事がここにはないと言って辞めていきます。でも、実は社内に彼が活躍できるポジションがあったんです。彼がそれを知らなかっただけ。私たちがそれを伝えなかっただけ

#エンゲージメント#採用#評価
東北の不動産・住宅企業が営業人材の定着率を高める方法——「辞める営業」を「育つ営業」に変える仕組み
エンゲージメント

東北の不動産・住宅企業が営業人材の定着率を高める方法——「辞める営業」を「育つ営業」に変える仕組み

新しく入った営業が、半年で3人中2人辞めました。残った1人も、辞めようか迷っていると言っています

#採用#研修#経営参画