東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来
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東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来

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東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来

この記事は、東北の人事をテーマにした連載の100本目です。第1回から読んでくださっている方もいれば、この記事が初めての方もいるでしょう。いずれの方にも、この記事では「東北の企業が、これからの人事をどう考えていくべきか」を、私なりの視点でお伝えしたいと思います。

99本の記事を書く中で、私は東北の様々な企業の人事の現場を見てきました。仙台の成長企業から、青森の老舗製造業まで。一人で人事を担っている若手から、30年のキャリアを持つベテランまで。そこで見えてきたのは、東北の人事が抱える課題の大きさと、同時に、東北の人事が持つ可能性の大きさです。

この記事では、東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤として、5つの方向性を提示します。


東北の人事が直面している環境変化

まず、東北の企業の人事が直面している環境変化を整理します。

変化1:人口減少と採用難の深刻化

東北地方の人口減少は、全国の中でも特に深刻です。若年層の首都圏への流出が続き、生産年齢人口は減り続けています。この傾向は今後も加速する見込みです。

これは、東北の企業にとって「必要な人材を採用できない」リスクが年々高まっていることを意味します。「求人広告を出せば人が集まる」時代は、東北では既に終わっています。

変化2:働き方の多様化

リモートワーク、副業、フリーランス、ギグワーク——働き方の選択肢が広がっています。東北の中小企業でも、「フルタイムの正社員」以外の働き方を受け入れなければ、必要な人材を確保できなくなりつつあります。

仙台では、リモートワーク可能な首都圏の企業に勤めながら仙台に住む人が増えています。こうした人材と、東北の企業がどう接点を持つかも、新しい課題です。

変化3:テクノロジーの進化

クラウド型の人事システム、AIを活用した採用ツール、データ分析に基づく人事施策——テクノロジーの進化が人事の仕事を大きく変えようとしています。

東北の中小企業では、まだExcelと紙で人事業務を行っている会社も多い。しかし、テクノロジーの活用は「大企業のもの」ではなく、中小企業にこそ恩恵が大きい。少ない人員で効率的に人事業務を行うためには、テクノロジーの力が不可欠です。

変化4:社員の価値観の多様化

終身雇用、年功序列、会社への忠誠心——かつて当たり前だった価値観が、若い世代を中心に大きく変わっています。「この会社で一生働く」ではなく、「自分のキャリアにとって意味のある期間だけ働く」という考え方が広がっている。

東北の企業は、社員の多様な価値観にどう向き合うか。「うちの会社のやり方に合わせてほしい」ではなく、「多様な価値観を持つ社員が、それぞれの形で力を発揮できる環境」を作れるか。これが問われています。

変化5:経営環境の不確実性

原材料価格の高騰、為替変動、自然災害、パンデミック——経営環境の不確実性はかつてないほど高まっています。「計画通りにいかないこと」が当たり前の時代に、人事はどう対応するか。

固定的な人員計画や画一的な人事制度では、変化に対応できません。環境の変化に応じて柔軟に対応できる、しなやかな組織と人事の仕組みが求められています。


方向性1:「経営と人事の接続」を強化する

これからの人事は、経営戦略と人事戦略を密接に連動させる必要があります。「経営は経営、人事は人事」と分断されている状態では、事業環境の変化にスピーディーに対応できません。

具体的な取り組み

経営者との定例ミーティングの実施

月に一度、経営者と人事が組織と人について対話する場を設ける。経営方針の変更を人事がリアルタイムで把握し、必要な人事施策を先回りして準備する。

経営計画と人員計画の連動

中期経営計画を策定する際に、「どんな人材が何名必要か」「現有人材のスキルギャップは何か」「育成にどれだけの投資が必要か」を同時に検討する。経営計画と人員計画が一体化していることが理想です。

人事データの経営活用

離職率、一人あたり売上高、採用コスト、研修投資額——こうした人事データを経営の意思決定に活用する。人事が「数字で語れる」ようになることで、経営者との対話の質が変わります。

東北の企業にとっての意味

東北の中小企業では、経営者と人事の距離が近い。これは大きな強みです。大企業では何層ものレポートラインを経なければ経営者に情報が届きませんが、東北の中小企業では人事担当者が社長と直接対話できる。

この距離の近さを活かし、経営と人事の接続を今以上に強化する。社長の考えを理解し、人と組織の観点から経営に貢献する。それが、東北の人事担当者が目指すべき姿の一つです。


方向性2:「採用」を再定義する

人口減少が進む東北では、「採用」の考え方そのものを見直す必要があります。

従来の採用からの転換

「待ちの採用」から「攻めの採用」へ

求人広告を出して応募を待つだけではなく、自社から積極的に候補者にアプローチする。採用マーケティングの考え方を取り入れ、自社の魅力を能動的に発信する。

「正社員一択」から「多様な雇用形態」へ

フルタイムの正社員だけでなく、パートタイム、契約社員、業務委託、副業人材など、多様な雇用形態を活用する。「この業務にはどんな雇用形態が最適か」を業務ごとに検討する。

「若手採用一辺倒」から「シニア・ミドル活用」へ

20〜30代の若手だけでなく、40〜60代のミドル・シニア人材の採用・活用にも目を向ける。東北には、都市部での経験を活かして地元に戻りたいと考えているミドル・シニア人材が一定数います。

「採用」だけでなく「定着」にも投資する

新しい人を採用することと同じかそれ以上に、今いる社員の定着に投資する。一人の退職を防ぐことは、一人の新規採用に匹敵する(それ以上の)経営効果があります。


方向性3:「人材育成」を事業投資と位置づける

人材育成を「福利厚生」や「社員のため」ではなく、「事業成長のための投資」と位置づけること。これが、これからの人事に求められる視点です。

具体的な取り組み

育成の目的を経営課題から逆算する

「社員のスキルアップ」という曖昧な目的ではなく、「来期の新規事業に必要なスキルを持つ人材を3名育成する」のように、経営課題から逆算して育成の目的を設定する。

OJTの質を高める

東北の中小企業の育成は、OJT(現場での指導)が中心です。しかし、OJTの質は指導者によって大きくバラつきます。OJTの進め方をマニュアル化し、指導者向けの研修を実施することで、OJTの質を底上げする。

外部リソースの活用

自社だけで育成するのではなく、外部の研修、セミナー、勉強会、異業種交流——外部のリソースを積極的に活用する。東北にも、人事図書館をはじめとした学びの場が増えてきています。

育成の効果を測定する

育成にかけた投資(時間と費用)と、その効果(スキル向上、生産性向上、定着率向上)を測定する。投資対効果を可視化することで、育成への投資を継続的に獲得できます。


方向性4:「制度」を「運用」で活かす

評価制度、報酬制度、等級制度——制度の「設計」に力を入れる会社は多いですが、「運用」に力を入れている会社は少ない。しかし、制度の価値は運用で決まります。

具体的な取り組み

評価面談の質を高める

評価制度の価値は、評価面談の質で決まります。管理職が評価面談を形式的にこなすのではなく、部下の成長を支援する対話の場として活用できるようにする。そのための管理職研修が不可欠です。

制度の「簡素化」を恐れない

複雑な制度は、運用が難しく、形骸化しやすい。東北の中小企業に合った、シンプルで運用しやすい制度を設計する。制度は「完璧」である必要はありません。「運用できる」ことが最重要です。

定期的な制度の見直し

一度作った制度を何年も放置しない。事業環境や社員構成の変化に合わせて、毎年または隔年で制度を見直す。見直しの際は、社員の声を反映する仕組みを設ける。


方向性5:「人事の専門性」を高める

東北の中小企業で人事を担当している方の多くは、「人事の専門家」としてのキャリアを歩んでいるわけではありません。総務と兼務だったり、他の部門から異動してきたり。人事の専門知識を体系的に学ぶ機会がないまま、日々の業務をこなしている。

しかし、これからの人事は、より高い専門性が求められます。労務管理、人事制度設計、採用戦略、人材育成、組織開発——これらの領域の知識と実践力が、人事の専門性です。

具体的な取り組み

外部の学習機会を活用する

人事に関する書籍、セミナー、研修、コミュニティ——学びの機会は増えています。忙しい中でも、月に1冊の書籍を読む、四半期に1回のセミナーに参加する、といった習慣を作る。

人事のネットワークを広げる

東北の人事担当者同士のネットワークを築く。他社の人事がどんな取り組みをしているか、どんな課題を抱えているか——こうした情報交換は、自社の人事を改善するヒントの宝庫です。

「経営の言葉」で話す力を身につける

人事の施策を「人にとって良いから」だけで説明するのではなく、「事業にこう貢献するから」という経営の言葉で説明できるようになること。売上、利益、生産性、コスト——経営数字と人事施策を結びつけて語る力が、これからの人事担当者には必要です。


東北の人事の「強み」を活かす

5つの方向性を示しましたが、最後に強調したいのは、東北の企業の人事には独自の「強み」があるということです。

経営者との距離の近さ。大企業の人事部門では何か月もかかるような意思決定が、東北の中小企業では社長との会話一つで動き出す。この機動力は大きな強みです。

社員一人ひとりの顔が見える規模感。データだけに頼るのではなく、「あの社員は最近元気がない」「このチームの雰囲気が変わった」——こうした肌感覚を持てる規模感は、大企業にはない強みです。

長期的な人間関係を重視する文化。東北の企業文化には、「人を大切にする」「長く付き合う」という価値観が根づいています。これは、人材育成や組織開発の基盤として非常に強い。

地域に根ざした使命感。「地域の雇用を守る」「地域の発展に貢献する」——この使命感が、東北の企業の人事に独自の意義を与えています。

これらの強みは、首都圏の大企業にはないものです。東北の人事は、首都圏の大企業の真似をする必要はありません。自分たちの強みを活かした「東北ならではの人事」を追求すること。それが、これからの東北の人事が進むべき方向です。


100本の記事を書いて思うこと

99本の記事を通じて、私は採用、評価、報酬、育成、組織開発、労務、制度設計——人事のあらゆるテーマを、東北の文脈で書いてきました。

一貫して伝えたかったことは、「人事は経営そのものである」ということです。人事は管理部門でもコストセンターでもありません。事業を伸ばすための最も重要な機能の一つです。

東北の企業が、人口減少や採用難という逆風の中でも成長し続けるために。社員一人ひとりが力を発揮し、やりがいを持って働ける環境を作るために。人事がその中心的な役割を果たすことが、私の願いです。

この連載を読んでくださった方が、明日の人事の実務で、ほんの一つでも新しい取り組みを始めてくれたなら、それに勝る喜びはありません。

東北の企業の人事に、正解はありません。自社の経営課題、社員構成、事業環境、地域特性——これらを総合的に考え、自社に合った「人事のあり方」を模索し続けること。その模索のプロセスそのものが、「これからの人事」です。

人事は孤独な仕事になりがちです。特に東北の中小企業では、一人で人事を担当している方も多い。しかし、同じ課題に向き合っている人事担当者は、東北にたくさんいます。この連載が、そうした方々にとって少しでも心の支えになっていれば幸いです。

東北の人事の未来は、明るい。そう確信しています。それは、東北の人事担当者の真摯さと、東北の企業が持つ「人を大切にする」文化を、この99本の記事を通じて肌で感じてきたからです。

これからも、東北の人事に関わるすべての方の挑戦を、私は応援し続けます。

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