東北の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法——四角い箱の並べ方で、会社の未来が変わる
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東北の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法——四角い箱の並べ方で、会社の未来が変わる

#採用#評価#組織開発#経営参画#制度設計

東北の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法——四角い箱の並べ方で、会社の未来が変わる

「組織図? そんなもの、社長室のホワイトボードに名前を書いてあるだけですよ」

青森のある建設会社の人事担当者にこう言われたとき、私は「それはもったいない」と感じました。組織図は、単なる名前の一覧表ではありません。会社がどこに向かおうとしているのか、どんな仕事をどのチームが担い、誰が誰に責任を負うのか——それを可視化した「経営の設計図」です。

東北の中小企業の多くは、組織図を「作らなければならないから作っている」か、「そもそも作っていない」かのどちらかです。しかし、組織図を戦略的に設計し直すことで、組織の動き方が変わり、事業の成果にまで影響を及ぼすことがあります。

組織図を描き直すことは、組織を考え直すことと同じです。今回は、東北の中小企業が組織図をどう設計し、どう活用すればいいかについて、具体的に考えてみたいと思います。


なぜ東北の中小企業で組織図が軽視されるのか

東北の中小企業で組織図が戦略的に使われていない理由は、いくつかあります。

理由1:「顔が見える」規模だから必要ないと思われている

従業員50名以下の会社では、「誰が何をしているか、みんな分かっている」と思われがちです。確かに、全員の顔と名前が一致する規模であれば、日常業務の中で困ることは少ないかもしれません。

しかし、「誰が何をしているか」が分かることと、「誰が何の責任を負い、どんな権限を持っているか」が明確であることは別の話です。責任と権限が曖昧なままだと、「あの件は誰に聞けばいいの?」「この判断は誰がするの?」という迷いが生じ、意思決定のスピードが落ちます。

理由2:社長がすべてを把握しているから

東北の中小企業、とくにオーナー経営の会社では、社長がほぼすべての業務を把握し、重要な判断を一手に引き受けているケースが多い。この場合、組織図は「社長」と「それ以外」の2階層になりがちです。

これで回るうちはいいのですが、会社が成長して従業員が増えると、社長一人で全員を見ることが物理的にできなくなる。このとき、組織図が設計されていないと、「社長に相談しないと何も動かない」というボトルネックが生まれます。

理由3:組織図の書き方を知らない

これは人事担当者にとっても意外とハードルが高い問題です。「組織図をどう作ればいいか」を体系的に学ぶ機会は、大企業の人事経験者でもない限り、ほとんどありません。結果として、既存の組織図をそのまま使い続けるか、テンプレートを借りてきて部署名を当てはめるだけになる。


組織図は「現在の地図」ではなく「未来の設計図」

組織図を戦略的に使うための最も重要な視点は、「組織図は現在の状態を記録するものではなく、未来の組織のあるべき姿を描くもの」ということです。

ある宮城の食品メーカーの例を紹介します。この会社は従業員120名で、3年後に新しい商品カテゴリに参入する計画を持っていました。現在の組織図は「製造部」「営業部」「管理部」の3部門体制。新規事業を進めるには、商品開発機能が必要ですが、現在の組織図のどこにもその機能がない。

人事担当者は社長と相談し、「3年後の組織図」を先に描くことにしました。そこには「商品開発部」が追加され、その部門に必要な人員と能力も定義されていました。この「未来の組織図」があることで、「いつまでに」「どんな人材を」「何人」確保すればいいかが明確になり、採用計画と育成計画が具体的に動き始めたのです。

現在の組織図しか持っていない会社は、「今ある人員で何ができるか」という発想になりがちです。しかし、未来の組織図を持つ会社は、「事業目標を達成するために、組織をどう変える必要があるか」という発想で動けます。


組織図設計の基本原則——3つの軸

組織図を設計する際に押さえるべき基本原則を、3つの軸から説明します。

軸1:「機能」で分けるか「顧客」で分けるか

組織を構成する最も基本的な軸は、「機能別」と「顧客別(市場別)」です。

機能別は、営業、製造、管理のように、業務の種類で分ける方式です。東北の中小企業のほとんどはこの形をとっています。メリットは専門性が高まること。デメリットは部門間の連携が取りにくくなることです。

顧客別は、「法人向け事業部」「個人向け事業部」のように、顧客セグメントで分ける方式です。メリットは顧客ニーズに対応しやすいこと。デメリットは機能の重複が生じることです。

従業員100名以下の東北の中小企業であれば、機能別を基本としつつ、事業拡大に伴って顧客別の要素を加えていくのが現実的です。

軸2:「階層」を何段にするか

組織の階層が多いほど、意思決定に時間がかかります。逆に、階層が少なすぎると、一人のマネージャーが管理する人数が多くなりすぎてマネジメントが機能しなくなります。

一般的に、一人のマネージャーが直接管理できる人数は5〜8名程度です。これを超えると、一人ひとりへの目配りが薄くなる。

東北の中小企業であれば、従業員50名以下なら2〜3階層、50〜200名なら3〜4階層が目安です。

軸3:「兼務」をどこまで認めるか

東北の中小企業では、人材の数に限りがあるため、一人が複数の役割を兼務することが珍しくありません。営業部長が総務も見ている、製造課長が品質管理も担当している——こうした兼務は現実的な対応です。

しかし、兼務が増えすぎると、「結局、誰が何の責任者なのかわからない」状態になります。組織図上では兼務を明示し、「主担当」と「副担当」を区別すること。また、兼務は一時的な措置であり、中長期的には専任化を目指すことを明記しておくことが重要です。


東北の中小企業でよくある組織図の問題パターン

ここからは、私が東北の企業と関わる中でよく目にする組織図の問題パターンと、その改善方法を紹介します。

パターン1:「社長直轄」が多すぎる

社長の直下に10以上の部門やチームがぶら下がっている組織図。これは、社長が全部を見ようとしている状態を意味します。

改善策は、中間管理層を設けること。すべての機能を社長直轄にせず、「事業系」と「管理系」の2つのグループに分け、それぞれにリーダーを置く。社長の直轄は3〜5に抑える。

岩手のある設備工事会社では、社長直轄の部署が12ありましたが、「工事本部長」と「管理本部長」を置いて組織を再編したところ、社長の意思決定スピードが格段に上がったそうです。

パターン2:部門名が実態を反映していない

「第一営業部」「第二営業部」という名前だけで、何が違うのかわからない。あるいは、「企画開発室」という部署があるのに、実際にはルーティンの事務作業しかしていない。

部門名は、その部門のミッション(何を達成する部門なのか)を反映すべきです。「法人営業部」「個人営業部」のように、対象を明確にするか、「東北エリア営業部」「関東エリア営業部」のようにエリアで区分する。

パターン3:「遊軍」が組織図上に存在しない

東北の中小企業には、特定の部署に属さず、社長の指示で何でもやる「遊軍」的な存在がいることがあります。この人たちが組織図上に位置づけられていないと、責任の所在が不明確になり、本人も「自分の役割は何なのか」がわからなくなります。

こうした人材は、「社長室」「経営企画」などの部署として組織図上に位置づけ、ミッションを明確にすることが必要です。


組織図を「使える道具」にするための工夫

組織図を描いて終わりではなく、実際に組織運営に活用するための工夫を紹介します。

工夫1:組織図に「ミッション」を書き込む

各部門の箱の中に、部門名だけでなく「この部門は何を達成する責任を持つか」を一文で書き込みます。たとえば、「製造部:品質と納期を守り、生産コストを年3%改善する」。

この一文があるだけで、部門の存在意義が明確になり、部門間の役割の重複や空白が見えるようになります。

工夫2:人数と過不足を可視化する

各部門の箱の中に「現在の人数」と「必要な人数」を書き込みます。たとえば、「営業部:現在5名 / 必要7名(2名不足)」。

これによって、採用の優先順位が一目でわかるようになります。秋田のある卸売業の会社では、この方法で「人が足りないのは営業部ではなく、物流部だった」ということに気づき、採用の方向を修正したそうです。

工夫3:年に一度、組織図の見直し会を行う

毎年、経営計画の策定時期に合わせて、組織図を経営者と人事で見直す時間を設けます。「来期の事業計画を実行するために、現在の組織図のままでいいか?」を問い、必要であれば組織図を変更する。

組織図は一度作ったら終わりではなく、事業環境の変化に応じて更新していくものです。


組織図から始まる「組織開発」

組織図は、単なる図ではありません。組織の現状を可視化し、あるべき姿との差を認識し、改善のアクションにつなげるための起点です。

「組織図を変えたら、会議体も変わった」「組織図を見直したら、評価制度の矛盾に気づいた」「組織図を描き直したら、必要な人材像が明確になった」——こうした変化は、東北の中小企業で実際に起きていることです。

組織図の設計は、人事の仕事の中でも地味な部分かもしれません。しかし、経営の意図を組織の形に落とし込むという意味で、極めて重要な仕事です。

東北の中小企業で人事をしている方に伝えたいことがあります。まず、今の組織図を壁に貼り、10分間眺めてみてください。「この組織図で、来期の事業目標を達成できるだろうか?」と自問してみてください。もし違和感があるなら、それは組織図を描き直すタイミングです。四角い箱の並べ方を変えるだけで、組織の動き方は確かに変わります。

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