東北の企業が「採用候補者体験(CX)」を向上させる方法——応募者が感じる「この会社、いいな」を設計する
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東北の企業が「採用候補者体験(CX)」を向上させる方法——応募者が感じる「この会社、いいな」を設計する

#採用#組織開発#面接

東北の企業が「採用候補者体験(CX)」を向上させる方法——応募者が感じる「この会社、いいな」を設計する

「先月、内定を出した方に辞退されました。理由を聞いたら、『選考中の対応が事務的で、自分が大切にされている感じがしなかった』と。ショックでした」

仙台のあるIT企業の人事担当者から聞いた話です。この会社は給与も悪くなく、仕事内容も魅力的。なのに内定辞退が続いていた。原因を探っていくと、採用プロセスの中で候補者が感じる「体験」に問題があったのです。

最近、「候補者体験」あるいは「CX(Candidate Experience)」という言葉を聞くことが増えました。これは、採用候補者が「企業を認知してから、応募し、選考を受け、入社する(あるいは辞退する)」までの一連のプロセスで得る体験のすべてを指す言葉です。

東北の中小企業において、CXはまだあまり意識されていません。しかし、人材獲得の競争が厳しい東北だからこそ、CXの改善が他社との差別化につながると私は考えています。


なぜ東北の企業こそCXを意識すべきなのか

東北の採用市場には、CXが特に重要になる理由があります。

理由1:候補者の選択肢が限られるからこそ、一つひとつの体験が重い

東北、とくに仙台以外の地方都市では、転職先の選択肢がそれほど多くありません。だからこそ、候補者は限られた選択肢の中で「どの会社が自分に合うか」を慎重に判断します。そのとき、選考プロセスで得る体験が判断を大きく左右するのです。

理由2:口コミの影響が大きい

東北は人のつながりが濃い地域です。「あの会社の面接、すごく感じが良かったよ」「あの会社の対応、ひどかったよ」——こうした口コミは、都市部以上に速く、広く伝わります。CXの良し悪しが、その会社の採用ブランドに直結します。

理由3:UIターン採用では第一印象が勝負

東北にUIターンで戻ってくる候補者にとって、選考プロセスはその会社の「第一印象」です。遠方から面接に来る候補者に対する配慮、オンライン面接の対応品質、レスポンスの速度——これらが「東北に戻りたい」という気持ちを後押しするか、「やっぱり都市部のほうがいいかも」と思わせるか、を分けます。


CXを構成する5つのタッチポイント

候補者体験は、採用プロセスのさまざまなタッチポイント(接点)で形成されます。東北の中小企業で特に重要な5つのタッチポイントを整理します。

タッチポイント1:求人情報との接触

候補者が最初に企業と出会う場面です。求人サイト、企業のWebサイト、紹介会社からの情報——ここでの体験が「応募するかどうか」を決めます。

東北の中小企業でよくある問題は、求人情報が「条件の羅列」になっていることです。「仕事内容:人事業務全般、給与:月給○万円〜、休日:土日祝」——これでは、候補者はその会社で働くイメージを持てません。

改善策は、「この仕事で何が経験できるか」「会社がどこに向かっているか」「どんな人と一緒に働くか」を具体的に伝えることです。

タッチポイント2:応募から書類選考の連絡まで

応募してから最初の連絡が来るまでの期間と内容が、候補者の印象を左右します。

ある調査によれば、応募後3日以内に連絡がないと、候補者の期待値は急速に下がるとされています。東北の中小企業では、人事が一人で対応しているため、応募対応が遅れがちです。

改善策は、「応募受付の自動返信メール」を設定すること。「ご応募いただきありがとうございます。○営業日以内にご連絡いたします」という一文があるだけで、候補者の不安は大幅に軽減されます。

タッチポイント3:面接

面接は、CXの中で最も影響が大きいタッチポイントです。候補者は面接を通じて、会社の雰囲気、面接官の人柄、組織の文化を感じ取ります。

東北の中小企業の面接でよくある問題を挙げます。

面接が「尋問」になっている。質問を一方的に投げかけ、候補者の回答を淡々と記録する。候補者にとっては「品定めされている」と感じる体験です。

面接官の準備不足。候補者の履歴書を面接直前に初めて読む。「えーと、前職は何でしたっけ?」と聞く。これは候補者に「自分に興味がないんだ」と感じさせます。

面接の場所や環境が整っていない。会議室が散らかっている、面接中に電話が鳴る、空調が効いていない——こうした環境的な要素も、候補者の体験に影響します。

タッチポイント4:選考結果の通知

合格・不合格の通知の仕方もCXの一部です。東北の中小企業で特に改善の余地が大きいのは、「不合格の通知」です。

「書類選考の結果、今回は見送りとさせていただきます」の一行だけで終わるメールは、候補者にとって冷たい体験です。不合格であっても、「応募いただいたことへの感謝」と「今後のご活躍を祈念する」気持ちを伝えること。たった2〜3行追加するだけで、候補者の印象は大きく変わります。

タッチポイント5:内定から入社まで

内定を出してから入社するまでの期間は、内定辞退のリスクが最も高い時期です。この期間に何のフォローもないと、候補者の不安は増大します。

改善策は、内定後に「入社前オリエンテーション」を設けること、定期的に連絡を取ること、配属先の社員とカジュアルに会う機会を作ることです。


CX改善の具体的な施策——東北の中小企業で実践できること

ここからは、予算や人員が限られた東北の中小企業でも実践できるCX改善の具体策を紹介します。

施策1:応募者対応のスピードを上げる

応募から24時間以内に自動返信メールを送る。書類選考は5営業日以内に結果を通知する。面接日程の調整は3営業日以内に行う——この「スピード基準」を決めて守るだけで、CXは大幅に向上します。

秋田のある建設会社では、「応募から初回連絡まで24時間ルール」を設けたところ、応募者の面接出席率が20%向上したそうです。

施策2:面接を「対話」に変える

面接を一方的な質問の場から、「相互理解の場」に変えること。具体的には、以下の工夫です。

面接の冒頭5分で、面接官が自己紹介をする。「私は人事の○○です。この会社に入って7年になります」と、自分の言葉で話す。これだけで、候補者の緊張が和らぎます。

面接の最後に「逆質問の時間」を十分に設ける。最低10分は確保する。候補者からの質問に丁寧に答えることで、「この会社は自分の話を聞いてくれる」という印象を与えます。

面接中に「会社の課題」も正直に伝える。「うちの会社はまだこういう部分が弱いです。でも、だからこそ一緒に作っていける環境です」——こうした正直さは、候補者の信頼につながります。

施策3:候補者への「個別メッセージ」を添える

テンプレートのメールではなく、候補者一人ひとりに対して個別のメッセージを一言添えること。たとえば、面接後のお礼メールに「今日お話しいただいた○○のご経験は、大変興味深く聞かせていただきました」と一文加える。

この「一手間」が、候補者に「自分をちゃんと見てくれている」と感じさせます。一人人事の方にとっては大変かもしれませんが、候補者への影響は非常に大きいです。

施策4:オフィスや職場を見せる

東北の中小企業では、面接を会議室で行って終わり、というケースが多い。しかし、面接の後に職場を見学させるだけで、候補者の体験は格段に良くなります。

「ここが実際に働く場所です」「この方が配属先のチームリーダーです」と紹介する。候補者は「ここで働く自分」をイメージできるようになり、入社後のギャップも減ります。

施策5:不合格者にも丁寧に対応する

不合格にした候補者への対応が、その会社の採用ブランドを決めると言っても過言ではありません。東北は人のつながりが濃い地域です。不合格にされた候補者が友人に「あの会社、対応が丁寧だったよ」と言ってくれれば、それは次の採用につながる口コミになります。


CX改善の効果を測定する

CX改善が実際に効果を発揮しているかを確認するための指標を紹介します。

応募辞退率:応募後に選考を辞退する候補者の割合。CXが悪いと、この数値が高くなります。

面接出席率:面接に実際に来る候補者の割合。連絡の速さや丁寧さが影響します。

内定承諾率:内定を出した候補者のうち、実際に入社する割合。選考プロセス全体のCXが反映されます。

候補者アンケート:選考終了後に、候補者に簡単なアンケートを送る。「選考プロセス全体の満足度」「面接の印象」「改善してほしい点」を3〜5問で聞く。

これらの指標を定期的に計測し、改善の効果を確認することが重要です。


東北のある会社の事例——CX改善で内定承諾率が変わった

山形のある製造業の会社の事例を紹介します。従業員150名で、毎年5〜8名の中途採用を行っていましたが、内定承諾率が50%前後で低迷していました。

人事担当者は、内定辞退者にヒアリングを行いました。すると、「面接が事務的だった」「選考結果の連絡が遅かった」「内定後のフォローがなかった」という声が共通して出てきました。

そこで、以下の改善を実施しました。

応募から初回連絡までのリードタイムを5日から1日に短縮。面接の冒頭に面接官の自己紹介を追加。面接後に手書きのお礼状を候補者に郵送。内定後に月1回のオンラインランチ会を実施。

結果、半年後には内定承諾率が50%から78%に改善。候補者アンケートでも「選考プロセスが丁寧だった」「会社の雰囲気が伝わった」という回答が増えたそうです。

特に効果が大きかったのは「手書きのお礼状」だったと人事担当者は振り返っています。「デジタルの時代だからこそ、手書きの一言が候補者の心に残る。これは東北の会社だからこそできることかもしれません」。


CXは「特別なこと」ではなく「当たり前のこと」を丁寧にやること

最後に、CXの本質について述べます。

CXの向上は、特別なツールを導入したり、大掛かりな施策を実行したりすることではありません。「連絡を速くする」「面接で相手の話を聞く」「感謝の気持ちを伝える」——こうした「当たり前のこと」を、一つひとつ丁寧にやること。それがCXの本質です。

東北の企業には、人と人との距離が近く、丁寧なコミュニケーションを大切にする文化があります。この文化的な強みを、採用プロセスにも活かすこと。それが、東北の企業のCXを自然に高めていくのだと思います。

採用は、候補者との「出会い」です。その出会いの質を高めること。それが、東北の企業の採用力を根本から変える力になると私は考えています。

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