
仙台の中小企業が「採用マーケティング」を始める方法——「募集を出して待つ」から、「自社の魅力を届ける」へ
目次
- 採用マーケティングとは何か
- 仙台の中小企業が採用マーケティングを始めるべき理由
- 理由1:求人広告の効果が低下している
- 理由2:仙台の採用市場は「地元志向」が強い
- 理由3:SNSの普及により、低コストで情報発信が可能
- ステップ1:採用ターゲットを明確にする
- ステップ2:自社の「採用における強み」を言語化する
- ステップ3:採用コンテンツを作る
- コンテンツ1:社員インタビュー
- コンテンツ2:1日の仕事の流れ
- コンテンツ3:経営者メッセージ
- コンテンツ4:事業や技術の紹介
- ステップ4:情報発信のチャネルを選ぶ
- チャネル1:自社採用ページ
- チャネル2:SNS(Instagram、X)
- チャネル3:note
- チャネル4:Googleビジネスプロフィール
- ステップ5:採用ファネルを管理する
- 認知フェーズ
- 興味フェーズ
- 応募フェーズ
- 選考フェーズ
- 内定・入社フェーズ
- 仙台の中小企業が陥りやすい採用マーケティングの落とし穴
- 落とし穴1:最初から完璧を目指す
- 落とし穴2:自社の実態と異なるイメージを発信する
- 落とし穴3:効果測定をしない
- 採用マーケティングは「積み重ね」で効く
仙台の中小企業が「採用マーケティング」を始める方法——「募集を出して待つ」から、「自社の魅力を届ける」へ
「求人広告を出しても、応募が来ない。たまに来ても、うちが求めている人材とは違う。もう何年もこの繰り返しです」
仙台のある建設会社の社長がこぼした言葉です。仙台は東北最大の都市であり、東北の中では比較的採用がしやすい地域だと思われています。しかし現実は違います。仙台でも中小企業の採用難は深刻です。大手企業の仙台支店や、公務員、地元の有力企業との採用競争にさらされ、知名度の低い中小企業は苦戦を強いられています。
私が仙台の中小企業の採用を見ていて感じるのは、多くの会社が「採用=求人広告を出すこと」だと思っていることです。求人媒体に掲載し、応募を待ち、面接して、合否を決める。この一方通行のプロセスだけで採用を行っている。
しかし、求人広告だけで自社の魅力を伝えきることはできません。限られた文字数と定型フォーマットの中で、他社との差別化を図るのは至難の業です。結果として、「給与」「休日」「勤務地」といった条件面でしか比較されず、条件で勝てない中小企業は応募者を獲得できない。
この構造を変えるのが「採用マーケティング」です。マーケティングの考え方を採用に応用し、「自社の魅力を、適切なターゲットに、適切なタイミングで、適切なチャネルを通じて届ける」。この発想に切り替えることで、仙台の中小企業でも採用の質と量を改善できます。
この記事では、仙台の中小企業が採用マーケティングを始めるための具体的な方法を、ステップバイステップで紹介します。
採用マーケティングとは何か
採用マーケティングとは、マーケティングの手法を採用活動に応用することです。具体的には、以下の考え方を採用に取り入れます。
ターゲティング:どんな人材に来てほしいのかを明確にする。 メッセージング:その人材に響くメッセージを設計する。 チャネル設計:そのメッセージを届ける手段を選ぶ。 コンテンツ制作:自社の魅力を伝えるコンテンツを作る。 ファネル管理:認知→興味→応募→選考→入社のプロセスを管理する。
従来の採用活動が「求人広告を出して待つ」だとすれば、採用マーケティングは「自社の魅力を能動的に届け、関心を持ってもらい、応募につなげる」という能動的なアプローチです。
仙台の中小企業が採用マーケティングを始めるべき理由
仙台の中小企業が採用マーケティングに取り組むべき理由は3つあります。
理由1:求人広告の効果が低下している
仙台の求人倍率は東北の中では高い水準にあり、求人広告は供給過剰の状態です。求職者が目にする求人情報の量は膨大で、一つひとつの広告に目を留める時間は短くなっています。
求人広告を出すだけでは、情報の洪水の中に埋もれてしまう。自社の魅力を別のチャネルで事前に届けておくことで、求人広告を見たときの反応が変わります。
理由2:仙台の採用市場は「地元志向」が強い
仙台で就職・転職を考える人には、「仙台で働きたい」「東北に貢献したい」という地元志向を持つ人が一定数います。この層に対しては、「給与」「休日」よりも「この会社で働く意味」「地域への貢献」「成長できる環境」といったメッセージのほうが響きます。
採用マーケティングでは、こうした「条件以外の魅力」を伝えることができます。これは、条件面で大手に勝てない中小企業にとって大きな武器になります。
理由3:SNSの普及により、低コストで情報発信が可能
かつて、企業の情報発信には大きなコストがかかりました。しかし今は、SNSやnote、YouTube、自社ブログなど、低コストで情報を発信できるツールが豊富にあります。仙台の中小企業でも、人事担当者1名で採用マーケティングを始めることが可能です。
ステップ1:採用ターゲットを明確にする
採用マーケティングの第一歩は、「どんな人に来てほしいのか」を具体的に定義することです。
「優秀な人材が欲しい」では不十分です。「優秀」とは何を意味するのか。学歴なのか、スキルなのか、経験なのか、それとも人柄や仕事への姿勢なのか。
仙台の中小企業で採用ターゲットを定義する際は、以下の要素を具体化します。
年齢層とキャリアステージ:新卒か、第二新卒か、中途か。20代前半か、30代か。
スキルと経験:必須のスキル・経験は何か。あれば望ましいレベルのものは何か。
価値観と志向性:安定志向か成長志向か。大企業志向か中小企業志向か。仙台に対するこだわりはあるか。
情報収集行動:どんな媒体で情報を集めているか。SNSを使っているか。どんなキーワードで検索しているか。
この「ターゲットペルソナ」を1〜2パターン作成します。完璧である必要はありません。「こういう人に来てほしい」というイメージを、社内で共有できるレベルまで具体化することが目的です。
ステップ2:自社の「採用における強み」を言語化する
次に、ターゲットに響く自社の強みを言語化します。ここで重要なのは、「自社がアピールしたいこと」ではなく、「ターゲットが知りたいこと」の視点で考えることです。
仙台の中小企業が持ちやすい強みを5つ挙げます。
強み1:仕事の裁量の大きさ
中小企業では、一人ひとりの担当範囲が広く、裁量が大きい。大企業では入社5年目で任せてもらえるような仕事を、中小企業では2年目から経験できる。この成長スピードの速さは、若手人材にとって大きな魅力です。
強み2:経営者との距離の近さ
仙台の中小企業では、社長と社員が日常的にコミュニケーションを取れる環境がある。経営者の考えを直接聞ける、自分の提案を経営者に直接伝えられる。この環境は、大企業では得られない経験です。
強み3:地域への貢献実感
仙台・東北を基盤とする企業であれば、自分の仕事が地域にどう貢献しているかを実感しやすい。「自分の仕事が地域の人の生活を支えている」という実感は、仕事のやりがいにつながります。
強み4:社員同士の関係性の濃さ
少人数の組織では、社員同士の関係が密になる。「チームの一員として認められている」「自分がいないと困る」という存在感を感じやすい環境です。
強み5:多様な経験ができる環境
中小企業では、専門分化が進んでいないため、複数の業務を経験できる。営業だけでなく企画も、マーケティングも経験できる。ゼネラリストとして成長したい人にとっては、理想的な環境です。
これらの強みの中から、自社に当てはまるものをピックアップし、具体的なエピソードや数字を添えて言語化します。
ステップ3:採用コンテンツを作る
自社の強みが言語化できたら、それを伝えるためのコンテンツを作成します。仙台の中小企業が低コストで始められるコンテンツを4つ紹介します。
コンテンツ1:社員インタビュー
最も効果的で、最も始めやすいコンテンツです。実際に働いている社員に「なぜこの会社を選んだのか」「仕事のやりがいは何か」「入社前と入社後のギャップはあったか」を聞き、記事にする。
ポイントは、良いことだけでなく「入社前に不安だったこと」「大変だったこと」も正直に書くこと。リアルなストーリーのほうが、読み手の信頼を得られます。
仙台の中小企業の場合、Uターン転職で入社した社員のストーリーは特に響きます。「なぜ東京から仙台に戻ってきたのか」「仙台で働くことの良さは何か」——こうしたストーリーは、同じような境遇の人の心に刺さります。
コンテンツ2:1日の仕事の流れ
「この会社に入ったら、どんな1日を過ごすのか」を具体的に紹介するコンテンツです。朝の出勤から夕方の退勤まで、時間軸に沿って仕事の内容を紹介する。
写真を多めに使い、オフィスの雰囲気や社員の表情を伝えることで、「この会社で働く自分」をイメージしやすくなります。
コンテンツ3:経営者メッセージ
社長が「どんな思いで会社を経営しているか」「どんな人に仲間になってほしいか」を語るコンテンツです。仙台の中小企業では、社長のパーソナリティや経営哲学が会社の雰囲気を大きく左右します。社長の人柄が伝わるコンテンツは、「この社長のもとで働きたい」という応募動機を生みます。
コンテンツ4:事業や技術の紹介
自社がどんな事業をしているのか、どんな技術や強みを持っているのかを紹介するコンテンツです。特に技術系の人材を採用したい場合、技術的な詳細を紹介するコンテンツは非常に効果的です。
ステップ4:情報発信のチャネルを選ぶ
作成したコンテンツを、どのチャネルで発信するか。仙台の中小企業が活用しやすいチャネルを紹介します。
チャネル1:自社採用ページ
最も基本的なチャネルです。自社のWebサイトに採用ページを設け、求人情報だけでなく、前述のコンテンツを掲載する。求人広告から自社サイトに流入してきた求職者が、「もっとこの会社のことを知りたい」と思ったときの受け皿になります。
チャネル2:SNS(Instagram、X)
日常的な情報発信に適したチャネルです。社内の雰囲気、社員の日常、イベントの様子など、カジュアルなコンテンツを発信します。仙台の20〜30代をターゲットにする場合、Instagramは特に有効です。
ただし、SNSの運用は継続が難しい。無理に毎日投稿する必要はありません。週2〜3回の更新を続けることが重要です。担当者を決め、投稿のルーティンを作ることで継続しやすくなります。
チャネル3:note
長文コンテンツの発信に適したプラットフォームです。社員インタビューや経営者メッセージなど、じっくり読んでもらいたいコンテンツはnoteに掲載するのが効果的です。SEOにも強く、検索エンジン経由での流入も期待できます。
チャネル4:Googleビジネスプロフィール
仙台で地元密着の企業であれば、Googleビジネスプロフィールの活用も有効です。求職者が「仙台 ○○業 求人」で検索した際に、自社の情報が表示される。写真や口コミの管理を行うことで、企業の信頼性を高められます。
ステップ5:採用ファネルを管理する
採用マーケティングでは、「認知→興味→応募→選考→内定→入社」の各段階を「ファネル(じょうご)」として管理します。
認知フェーズ
「自社の存在を知ってもらう」段階。SNSやnoteでのコンテンツ発信、合同企業説明会への参加、地域イベントへの協賛などが該当します。この段階では、まだ応募意思のない人にも自社の存在を認知してもらうことが目的です。
興味フェーズ
「自社に興味を持ってもらう」段階。採用ページのコンテンツを充実させ、会社説明会やカジュアル面談を実施する。求職者が「この会社、ちょっと気になる」と思う状態を作ります。
応募フェーズ
「実際に応募してもらう」段階。応募のハードルを下げることが重要です。エントリーフォームの簡素化、カジュアル面談からの導線設計、応募後の迅速なレスポンスなどが効果的です。
選考フェーズ
「候補者をしっかり見極め、同時に自社の魅力を伝える」段階。選考プロセスそのものが、候補者にとっての「企業体験」です。面接での対応、選考スピード、フィードバックの質——これらすべてが、候補者の入社意欲に影響します。
内定・入社フェーズ
「内定を出してから入社するまでの期間」のフォロー。内定辞退を防ぎ、入社に向けた不安を解消する。定期的な連絡、先輩社員との交流機会、入社前の情報提供などが有効です。
各フェーズの数値を記録し、「どの段階でどれだけの人が離脱しているか」を把握することで、改善すべきポイントが見えてきます。
仙台の中小企業が陥りやすい採用マーケティングの落とし穴
採用マーケティングを始める際に、仙台の中小企業が陥りやすい落とし穴を3つ挙げます。
落とし穴1:最初から完璧を目指す
「採用ページをリニューアルして、動画も作って、SNSも毎日更新して……」と、一度にすべてを始めようとすると、どれも中途半端になります。まずは1つのチャネルで、1種類のコンテンツから始めること。成果が出たら、少しずつ拡大する。
落とし穴2:自社の実態と異なるイメージを発信する
採用マーケティングで「きれいな面」だけを見せると、入社後のギャップで早期離職を招きます。自社の強みだけでなく、課題も正直に伝える。「まだまだ発展途上の会社だが、一緒に成長できる」というメッセージのほうが、長く働いてくれる人材を惹きつけます。
落とし穴3:効果測定をしない
「コンテンツを発信しているけど、効果があるのかわからない」という状態が続くと、モチベーションが下がり、やめてしまう。最低限、「どのチャネルからどれだけの流入があったか」「応募者に自社をどこで知ったか聞く」の2つは実施しましょう。
採用マーケティングは「積み重ね」で効く
最後に強調したいのは、採用マーケティングは「すぐに効果が出る」ものではないということです。コンテンツを1本公開したら翌月から応募が倍増する、ということは期待しないでください。
採用マーケティングの効果は、コンテンツの蓄積によって徐々に現れます。社員インタビューが10本、20本と蓄積されていくことで、自社のイメージが求職者の中に形作られていく。SNSのフォロワーが少しずつ増え、自社の存在を知る人が広がっていく。
仙台の中小企業で採用マーケティングを始めて、「明らかに応募の質が変わった」と実感するまでには、半年から1年程度かかるのが一般的です。しかし、一度蓄積したコンテンツと認知は、求人広告のように「掲載をやめたら効果がなくなる」ことはありません。
まずは小さく始めること。社員インタビューを1本書くことから始めてもよい。自社の強みを言語化することから始めてもよい。仙台という街の魅力と、自社の仕事の魅力を掛け合わせて、「この会社で、仙台で働きたい」と思ってもらえる情報を、少しずつ発信していく。
その積み重ねが、仙台の中小企業の採用力を根本から変えていくと私は考えています。
関連記事
採用・選考東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来
この記事は、東北の人事をテーマにした連載の100本目です。第1回から読んでくださっている方もいれば、この記事が初めての方もいるでしょう。いずれの方にも、この記事では東北の企業が、これからの人事をどう考えていくべきかを、私なりの視点でお伝えしたいと思います。
採用・選考東北の企業が「内定辞退」を減らすための採用プロセス改善——選ばれる企業になるために、選考中にできること
3名に内定を出して、2名に辞退されました。残った1名も、入社日ギリギリまで悩んでいた。採用活動にかけた半年間の労力は何だったのか、と脱力しました
採用・選考東北の企業が「人事BPO」を活用して戦略業務に集中する方法——「全部自分でやる」からの脱却
人事の仕事が多すぎて、本当にやるべきことに手が回らないんです。給与計算、社会保険の手続き、勤怠管理、採用の事務作業、入退社の手続き——毎日これに追われていて、人事制度の見直しや社員の育成計画なんて、考える余裕がありません
採用・選考東北の中小企業が「人材紹介会社」との付き合い方を最適化する方法——紹介手数料を「投資」に変える関係構築
人材紹介会社に依頼しているんですが、紹介される人がうちに合わない。年収の35%も手数料を払うのに、紹介された人が半年で辞めてしまったこともあります。正直、コスパが悪いと感じています