東北の中小企業がリファラル採用を成功させるための組織づくり——「社員が人を連れてくる会社」になる条件
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東北の中小企業がリファラル採用を成功させるための組織づくり——「社員が人を連れてくる会社」になる条件

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東北の中小企業がリファラル採用を成功させるための組織づくり——「社員が人を連れてくる会社」になる条件

「求人を出しても応募が来ない。人材紹介を使うと年収の30%を手数料で取られる。でも、うちの佐藤さんが連れてきた2人は、採用コストゼロで、もう3年以上辞めていない」

福島のある製造業の社長が、半ば驚きながら語った言葉です。この「佐藤さんが連れてきた2人」こそ、リファラル採用の実例です。

リファラル採用(社員紹介採用)とは、既存の社員が知人や友人を候補者として紹介する採用手法です。大企業やIT企業では一般的になりつつあるこの手法が、東北の中小企業でも注目され始めています。

東北の中小企業にとって、リファラル採用は単なる「採用チャネルのひとつ」ではありません。求人媒体の効果が限られ、人材紹介のコストが重い東北の中小企業にとって、リファラル採用は最もコスト効率が高く、定着率も高い採用手法になりえます。

しかし、「社員に『誰かいい人いない?』と聞くだけ」ではリファラル採用は成功しません。社員が「自分の知人にこの会社を紹介したい」と思える組織を作ること。それが、リファラル採用の本当のスタートラインです。


東北の採用市場とリファラル採用の可能性

東北の中小企業の採用環境を、まず数字で確認しましょう。

東北6県の有効求人倍率は、全国平均とほぼ同水準か、それを上回る業種もあります。つまり、求人を出しても人が来にくい状況。特に製造業、建設業、介護業などでは、求人倍率が2倍を超え、「2社に1社しか採用できない」状態が続いています。

宮城のある機械部品メーカー(従業員50名)の採用データです。過去3年間の採用チャネル別の実績は以下の通りでした。

求人媒体からの応募:年間15件。うち採用に至ったのは3名。1名あたりの採用コストは約40万円(求人掲載費÷採用数)。入社後1年以内の離職率は33%(3名中1名が退職)。

人材紹介会社経由:年間5件。うち採用に至ったのは2名。1名あたりの採用コストは約120万円(年収400万円×紹介手数料30%)。入社後1年以内の離職率は50%(2名中1名が退職)。

リファラル採用:年間3件。うち採用に至ったのは2名。1名あたりの採用コストは約5万円(紹介した社員への謝礼金)。入社後1年以内の離職率は0%。

この数字が示すのは明確です。リファラル採用は、コストが圧倒的に低く、定着率が圧倒的に高い。問題は、「年間3件」という件数の少なさ。この件数を増やすことができれば、採用の質とコスト効率が大きく改善します。


なぜリファラル採用は定着率が高いのか

リファラル採用の定着率が高い理由は、3つあります。

第一に、「リアルな情報が伝わっている」。紹介者である社員は、会社の良い点も課題も知っている。候補者に対して、求人広告のような「いいことだけ」ではなく、「実際のところはこうだよ」というリアルな情報を伝える。入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップが少ないため、早期離職が減ります。

第二に、「紹介者がフォローする」。リファラルで入社した社員は、紹介してくれた人が社内にいる。困ったことがあれば相談できる。孤立しにくい。この「社内に味方がいる安心感」が、定着を支えています。

第三に、「紹介者自身が当事者意識を持つ」。自分が紹介した人が辞めてしまうのは、紹介者にとっても辛いこと。だからこそ、紹介者は入社後のフォローに自然と力を入れる。これが、組織全体の「受け入れ体制」の強化にもつながります。

岩手のある食品会社で、リファラル採用で入社した社員にインタビューしたところ、こんな声がありました。「大学の先輩が『うちの会社、大変なこともあるけど、やりがいはあるよ』と正直に話してくれた。いいことだけ言われるより信用できた。入社してみて、先輩が言っていた通りだと思った」。

この「信用」の連鎖が、リファラル採用の最大の強みです。


リファラル採用を「仕組み化」する5つのステップ

「社員に紹介を頼む」だけでは、リファラル採用は散発的な取り組みに終わります。仕組みとして定着させるには、以下の5つのステップが必要です。

ステップ1:制度を明文化する。紹介の対象(どの職種で紹介を受け付けるか)、紹介のプロセス(誰に、どのように紹介するか)、紹介報奨金(紹介者への謝礼金額と支払い条件)を明確にする。

秋田のある建設会社では、リファラル採用制度を以下のように設計しました。紹介対象は全職種。紹介報奨金は1名の採用確定時に5万円、入社6ヶ月経過時にさらに5万円(合計10万円)。紹介はWeb上の専用フォームまたは人事担当者への口頭連絡のいずれでもOK。

ステップ2:全社員に制度を周知する。制度を作っただけでは、社員は紹介してくれません。「こういう制度がある」「こういう人材を探している」を全社員に定期的に伝える必要があります。

この会社では、月に1回の全体朝礼で「現在募集中のポジション」と「リファラル採用制度」を紹介しています。「こんな人いませんか?」を具体的に伝える。「溶接の経験がある方」「建設現場の管理経験がある方」——具体的であればあるほど、社員は「あ、あの人がいるかも」と思いつきやすい。

ステップ3:紹介のハードルを下げる。「紹介する」ことへの心理的ハードルは意外と高い。「紹介したのに不採用になったら、気まずい」「自分の友人を巻き込みたくない」——こうした懸念を払拭する必要があります。

具体的には、「紹介=推薦」ではないことを明確にする。「あなたの知り合いでこの仕事に興味がありそうな人がいたら、教えてください。選考は通常と同じプロセスで行います。紹介したからといって、必ず採用するわけではありません」——このスタンスを示すことで、紹介者の心理的負担が減ります。

ステップ4:紹介者にフィードバックする。紹介された候補者の選考状況を、紹介者にフィードバックする。「ご紹介いただいた○○さんは、来週面接を予定しています」「残念ながら今回はご縁がありませんでしたが、紹介していただきありがとうございました」——このフィードバックがないと、「紹介したのに、どうなったかわからない」と紹介者の不満が蓄積します。

ステップ5:成功事例を社内で共有する。リファラル採用で入社した社員が活躍している姿を、社内で紹介する。「Aさんは、Bさんの紹介で入社し、今ではチームリーダーとして活躍しています」——こうした事例の共有が、「自分も紹介してみよう」という意欲を刺激します。


「紹介したくなる会社」の条件とは

リファラル採用の本質的な問題は、「制度の設計」ではなく「組織の魅力」です。どんなに立派な制度を作っても、社員が「この会社を紹介したくない」と思っていたら、リファラルは発生しません。

逆に言えば、リファラル採用の件数は、社員の「この会社で働くことへの満足度」のバロメーターでもあります。

社員が「この会社を紹介したい」と思う条件を、東北の企業の事例から整理します。

第一に、「仕事にやりがいがある」。単に忙しいだけでなく、自分の仕事が顧客や社会に貢献している実感がある。山形のある農業機器メーカーの社員は、「うちの機械で東北の農家が楽になっている。その姿を見ると、友達にも勧めたくなる」と語っています。

第二に、「人間関係が良い」。上司との関係、同僚との関係、部署間の関係——これらが良好であること。リファラル採用では、紹介者は「自分の知人がこの職場でやっていけるか」を考えます。ギスギスした職場に友人を呼ぶことはしません。

第三に、「正当に評価される」。頑張った分が報われる実感があること。「頑張っても頑張らなくても同じ」という状態の会社を、友人に紹介したいとは思いません。

第四に、「成長できる」。スキルが身につき、キャリアが発展する実感があること。「ここで3年働けば、こんな力がつく」と言えることが、紹介の動機になります。

宮城のある IT企業(従業員30名)は、リファラル採用の比率が全採用の60%に達しています。社長は「リファラルが多いということは、社員がうちの会社を良い会社だと思ってくれている証拠。これが一番の経営指標だ」と言います。


東北ならではの「つながり」をリファラルに活かす

東北には、リファラル採用に有利な土壌があります。それは、「人と人のつながりの密度が高い」ことです。

都市部と比べて、東北では同じ地域に住む人同士のつながりが強い。同級生、幼なじみ、スポーツのチームメイト、地域の行事で顔を合わせる知り合い——こうしたつながりが、リファラルの候補者プールになります。

青森のある建材メーカーは、社員の「地元ネットワーク」を採用に活用しています。社員が地域の祭りや行事に参加した際に、「うちの会社で人を探している」という話を自然にできる環境を作っている。無理に「紹介してくれ」と頼むのではなく、社員が自分の仕事に誇りを持ち、自然と話題にする状態を目指している。

また、東北の中小企業の多くは、地域の商工会や業界団体に加盟しています。これらのネットワークを通じて、「自社で活躍できそうな人材」の情報を得ることもできます。社員だけでなく、取引先や協力会社からの紹介も、広い意味でのリファラルと言えるでしょう。

福島のある食品卸会社は、取引先の担当者から人材の紹介を受けることがあります。「○○さんが転職を考えているらしい。あなたの会社に合いそうだと思って」——こうした紹介は、取引先が自社の良さを認めてくれている証拠でもあります。


リファラル採用の「落とし穴」と対策

リファラル採用にはメリットが多いですが、注意すべき「落とし穴」もあります。

第一の落とし穴は、「同質化のリスク」。社員が紹介する人は、自分と似たタイプの人が多い傾向があります。年齢、学歴、価値観が似た人が集まりやすい。これは、短期的にはチームの和を保ちやすいですが、長期的には多様性が失われ、イノベーションが生まれにくくなるリスクがあります。

対策は、リファラル採用と他の採用チャネルを併用すること。リファラルの比率を全体の40〜50%程度に留め、残りは求人媒体、ハローワーク、学校からの紹介など、異なるチャネルで確保する。

第二の落とし穴は、「紹介者と被紹介者の関係の管理」。同じ部署に友人同士が配属されると、私的な関係が業務に影響する可能性がある。評価やフィードバックが甘くなったり、逆に過度に厳しくなったりするリスク。

対策は、原則として紹介者と被紹介者を異なるチームまたは異なる上司の下に配置すること。同じ会社で働きつつも、業務上の独立性を保てる配置を心がける。

第三の落とし穴は、「不採用時の人間関係への影響」。紹介された候補者が不採用になった場合、紹介者と候補者の関係がぎくしゃくする可能性がある。

対策は、先述の通り「紹介=推薦ではない」ことを最初から明確にすること。加えて、不採用の場合は紹介者に丁寧に理由を説明し、「紹介していただいたこと自体に感謝している」というメッセージを伝える。


リファラル採用の効果を「数字」で経営者に伝える

リファラル採用を経営者に提案する際、最も効果的なのは数字で語ることです。

宮城のある製造業(従業員80名)で、リファラル採用を本格導入して2年間の効果です。

採用コストの削減。リファラル以外の採用チャネルの平均コストは1名あたり約60万円。リファラルは1名あたり約10万円(紹介報奨金)。2年間でリファラルにより8名を採用。コスト削減額は(60万円-10万円)×8名=400万円。

離職率の改善。リファラル採用者の1年以内離職率は5%。その他の採用チャネルからの入社者は25%。リファラル採用の拡大により、全社の離職率が18%から12%に改善。6%の改善は、80名の会社で約5名の退職防止に相当。1名あたりの退職コスト(採用費+育成費+生産性低下)を150万円とすると、年間750万円のコスト削減。

採用スピードの向上。求人媒体経由の採用は、掲載から入社まで平均4ヶ月。リファラルは、紹介から入社まで平均2ヶ月。人員補充が早いことで、欠員期間の機会損失を削減。

合計で、年間1,000万円以上のコスト削減効果。リファラル採用制度の運営コスト(報奨金、社内告知、管理工数)は年間約100万円。投資対効果は10倍以上です。


「いい会社」を作ることが最強の採用戦略

リファラル採用の話をすると、「どうやって社員に紹介してもらうか」というテクニックに目がいきがちです。しかし、本質はそこではありません。

社員が「この会社で働いてよかった」「友人にもこの会社を勧めたい」と心から思える組織を作ること。それが、リファラル採用の最強の基盤であり、同時に、組織力そのものを高める行為です。

東北の中小企業は、求人広告の予算が限られている。人材紹介会社の手数料は重い。その中で、「社員が人を連れてくる会社」になることは、最も合理的で、最も持続可能な採用戦略です。

制度を整えることは大切です。しかし、それ以上に大切なのは、社員が誇りを持てる組織を作ること。リファラル採用は、「結果」であって「手段」ではないのです。


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