東北の中小企業が採用コストを最適化する方法——「高い金をかけて人が来ない」から脱却するために
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東北の中小企業が採用コストを最適化する方法——「高い金をかけて人が来ない」から脱却するために

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東北の中小企業が採用コストを最適化する方法——「高い金をかけて人が来ない」から脱却するために

「去年、採用に500万円使いました。でも、結局採れたのは2人。1人あたり250万円です。しかも、そのうち1人は半年で辞めました。実質500万円で1人。もう、やっていられません」

秋田のある建設会社の社長の言葉です。私はこの相談を受けたとき、東北の中小企業の採用コストの問題が、単に「お金をかけすぎている」のではなく、「お金の使い方が最適化されていない」ことに本質があると感じました。

東北の中小企業における採用コストは、年々上昇しています。求人広告の単価が上がり、人材紹介の手数料も高止まりしている。しかも、東北は労働人口の減少が全国より速いペースで進んでおり、採用の競争は激しくなる一方です。

限られた予算で、必要な人材を、適切なタイミングで確保する。これは東北の中小企業の経営者にとって、最も切実な課題の一つです。

私がこれまで東北の企業で採用戦略の設計に関わってきた経験から、採用コストを「削減する」のではなく「最適化する」ための具体的な方法をお伝えします。


採用コストの全体像——「見えないコスト」を可視化する

採用コストを最適化するには、まず「何にいくらかかっているか」を正確に把握する必要があります。

多くの東北の中小企業では、採用コストを「求人広告費」だけで把握しています。しかし、実際の採用コストはそれだけではありません。

私が東北の企業に採用コストの全体像を把握するために使っている項目は以下の通りです。

「直接コスト」:求人広告費、人材紹介手数料、合同企業説明会の参加費、採用サイトの制作・運用費、採用パンフレットの印刷費。

「間接コスト」:採用担当者の人件費(業務時間×時給単価)、面接官の人件費(面接時間×時給単価)、内定者フォローにかかる時間と費用、社内関係者の調整コスト。

「失敗コスト」:早期離職者にかかった給与・社保・教育費、早期離職による再採用にかかる費用、早期離職によるチームの業務負荷増加。

岩手のある機械メーカー(従業員60名)で、これらを全て洗い出してもらったところ、年間の採用コストは表面上の「200万円」ではなく「480万円」でした。特に、間接コスト(採用に関わる社員の人件費)が200万円以上を占めていた。「採用は人事の仕事だから、人事の給料は別でしょう」と思いがちですが、採用に費やしている時間を他の業務に充てられるなら、それは機会損失です。

この「見えないコスト」を可視化することで、初めて「どこを最適化するか」の議論ができるようになります。


採用チャネル別のROI分析——「どこに金をかけるべきか」

東北の中小企業が使う主な採用チャネルとそれぞれの特性を、私の経験に基づいて整理します。

第一に、「大手求人サイト」。リクナビ、マイナビ、doda等の全国型求人サイト。掲載費は年間50〜200万円。全国から応募が来る可能性がある反面、東北の中小企業は大量の求人の中に埋もれがちです。

仙台のある企業の実績を見ると、大手求人サイトに年間120万円を投じて応募が30名。うち面接に進んだのが10名。内定を出したのが3名。実際に入社したのは1名。1名あたりの採用コストは120万円。

第二に、「地元求人媒体」。河北新報の求人欄、地元のフリーペーパー、ハローワーク。費用は年間10〜50万円と比較的安価。東北の求職者にリーチしやすいメリットがあります。

秋田のある食品会社では、地元のフリーペーパーと ハローワークの組み合わせで、年間のコストは30万円。応募は15名、入社は3名。1名あたり10万円。大手サイトと比べてコスト効率は10倍以上です。ただし、応募者の年齢層が高めになる傾向があります。

第三に、「人材紹介会社」。紹介手数料は年収の25〜35%。年収400万円の人材なら100〜140万円。確実に人が来るメリットがある反面、コストが高い。また、東北に拠点を持つ人材紹介会社は少なく、東京の紹介会社が東北の企業の事情を十分に理解できていないケースもあります。

第四に、「リファラル採用」。社員の紹介による採用。紹介謝礼を払うとしても5〜20万円程度。しかも、入社後の定着率が一般的な採用ルートと比べて高い傾向があります。

山形のある製造業では、過去3年間の採用ルート別定着率を分析しました。大手求人サイト経由の1年定着率は55%。地元媒体経由は70%。リファラル採用は90%。この差は、金額以上のインパクトです。

第五に、「自社採用サイト・SNS」。自社で採用ページやSNSアカウントを運用し、直接応募を獲得する方法。初期投資(サイト制作費30〜100万円)はかかりますが、運用が軌道に乗ればランニングコストは月数万円。

これらの分析を踏まえて、私が東北の中小企業に提案しているのは「チャネルミックスの最適化」です。全ての予算を1つのチャネルに投じるのではなく、複数のチャネルを組み合わせ、それぞれのROIを追跡しながら配分を調整する。


採用コスト最適化の5つの実践策

具体的な最適化策を5つ紹介します。

実践策1:リファラル採用の仕組み化

リファラル採用は、東北の中小企業にとって最もコスト効率の高い採用チャネルです。しかし、「社員に『誰かいない?』と聞くだけ」では機能しません。仕組みにする必要があります。

仙台のある不動産会社で導入したリファラル採用の仕組みです。まず、「紹介カード」を全社員に配布。裏面に会社の魅力と募集ポジションが書かれている。社員が知人に「うちで働かない?」と声をかけるときに手渡す。紹介が入社に至った場合、紹介者に10万円の報奨金を支給。入社後6か月定着した時点で追加5万円。

この仕組みを導入して1年で、リファラル経由の入社が5名。コストは報奨金75万円。大手求人サイト経由で5名採用する場合のコスト(推定600万円)と比べて、8分の1以下です。

実践策2:採用プロセスの効率化

「面接に3回来てもらう」「書類選考に2週間かかる」——こうした長いプロセスが、応募者の離脱を招いています。東北では「複数の会社を並行で受ける」求職者は少なくなく、先に内定を出した会社に流れるケースが多い。

私が推奨しているのは、「2ステップ選考」への短縮です。一次面接(現場責任者)と最終面接(社長)の2回で完結させる。書類選考は1週間以内、面接から内定までは2週間以内。このスピード感が、東北の中小企業の採用成功率を左右します。

実践策3:採用サイトの自社運用

外部の求人サイトに依存するのではなく、自社の採用ページを充実させることで、直接応募を増やす。

福島のある建設会社では、自社サイトに社員インタビュー、一日の仕事の流れ、福利厚生の詳細、先輩社員のキャリアストーリーを掲載しました。制作費は50万円。運用開始後1年で、自社サイト経由の応募が全体の35%を占めるようになった。求人サイト経由の応募が減った分、年間の求人広告費を80万円削減できました。

実践策4:インターンシップの活用

大学生や高校生を対象としたインターンシップは、採用コストを長期的に最適化する有効な手段です。

盛岡のあるIT企業では、東北の大学と連携して夏季5日間のインターンシップを毎年実施しています。参加者は毎回5〜8名。インターンシップにかかるコストは年間約30万円(交通費・食事代・人件費)。この中から、毎年1〜2名が新卒入社しています。採用コストは実質15〜30万円。しかも、インターンシップで仕事内容を理解しているため、入社後のミスマッチが極めて少ない。

実践策5:定着率の向上による「隠れた採用コスト削減」

最も効果的な採用コスト削減策は、「人が辞めない会社を作る」ことです。

離職率が10%の会社と5%の会社では、年間の採用必要人数が半分になります。採用コストも半分。もし定着率を改善することで年間の退職者を3名減らせれば、その分の採用コスト(3名 × 150万円 = 450万円)がそのまま削減されます。

青森のある運送会社では、「入社1年以内の定着率」を経営のKPIに設定し、オンボーディングの改善に取り組みました。2年間で定着率が60%から85%に改善。年間の採用必要人数が8名から5名に減り、採用コストが年間約350万円削減されました。


採用コスト管理のための仕組み

採用コストを継続的に最適化するためには、「管理の仕組み」が必要です。

私が東北の企業に推奨している管理方法はシンプルです。Excelで「採用コスト管理シート」を作り、以下の項目を記録します。

採用チャネル、費用、応募数、面接数、内定数、入社数、半年定着数、1名あたり採用コスト、1名あたり定着コスト。

これを半期ごとに更新し、チャネル別のROIを比較する。「このチャネルはコストが高い割に定着率が低い」「このチャネルは安くて定着率も高い」——数字に基づいた判断ができるようになります。

宮城のある商社では、この管理シートを導入して2年間運用した結果、採用コストを年間で30%削減しながら、採用数は維持、定着率は向上という成果を達成しました。


東北の企業が陥りがちな「採用コストの罠」

私がこれまで東北の企業を見てきた中で、繰り返し目にする「採用コストの罠」が3つあります。

罠の第一は、「去年と同じことを続ける」。去年使った求人サイトを今年もそのまま使う。去年の合同企業説明会に今年も出展する。効果の検証をせず、惰性で同じチャネルに投資し続けることで、コストの無駄が蓄積します。

盛岡のある建設会社では、5年間同じ求人サイトに年間80万円を投じていましたが、過去3年間の応募者はゼロだったことが判明しました。「毎年更新してきたから」という理由だけで契約を続けていた。この80万円をリファラル採用の報奨金に振り替えたところ、初年度で2名の採用に成功しています。

罠の第二は、「安さに飛びつく」。費用が安い採用チャネルを選ぶこと自体は悪くありません。しかし、安さだけで選んだ結果、応募者の質が低く、採用しても早期離職する。結果として、「安い媒体費 + 高い失敗コスト」のトータルコストが膨らみます。

罠の第三は、「採用を急ぎすぎる」。人手が足りないときは「とにかく誰でもいいから早く採りたい」という心理が働きます。しかし、採用基準を下げて急いで採った人材が3か月で辞めれば、また最初からやり直しです。「急がば回れ」——選考基準を維持し、適切な人材をじっくり見極める方が、長期的な採用コストは下がります。


「お金をかけない採用」は存在しない——投資としての採用コスト

最後に、私が東北の企業の経営者にお伝えしたいことがあります。

「採用コストを削減する」ことが目的ではありません。「採用コストの投資効率を最大化する」ことが目的です。

人材は企業の最も重要な資産です。その資産を獲得するための投資を渋れば、事業の成長は止まります。問題は「いくらかけるか」ではなく、「かけた費用に対してどれだけのリターンを得ているか」です。

東北の労働市場は今後もますます厳しくなります。その中で、「正しいところに、正しい金額を、正しい方法で投資する」採用戦略を持つ企業だけが、必要な人材を確保できる。採用コストの最適化は、東北の中小企業の生存戦略そのものだと私は考えています。

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