東北の企業がコンピテンシー評価を導入する際の考え方——「何を達成したか」だけでなく「どう行動したか」を評価する
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東北の企業がコンピテンシー評価を導入する際の考え方——「何を達成したか」だけでなく「どう行動したか」を評価する

#採用#評価#組織開発

東北の企業がコンピテンシー評価を導入する際の考え方——「何を達成したか」だけでなく「どう行動したか」を評価する

「営業成績はいつもトップの社員がいるんですが、周囲と全く協力しない。後輩の面倒も見ない。チーム全体の雰囲気が悪くなっている。でも、数字を出しているから評価を下げるわけにもいかない。どうすればいいのか」

盛岡のある商社の営業部長から受けた相談です。私はこの問題が、「成果だけで評価する」仕組みの限界を示していると感じました。

コンピテンシー評価とは、「高い成果を出す人に共通して見られる行動特性(コンピテンシー)」を評価基準にする手法です。「何を達成したか(成果)」だけでなく、「どのように行動したか(プロセス・行動)」を評価の対象にします。

成果だけを見る評価では、先ほどの事例のように「数字は出すが組織に悪影響を与える社員」を正当に評価できません。コンピテンシー評価を導入すれば、「成果を出しつつ、周囲と協力し、後輩を育てる」行動を評価できるようになります。

しかし、コンピテンシー評価の導入は、設計と運用を間違えると形骸化します。特に東北の中小企業では、大企業向けのコンピテンシーモデルをそのまま持ち込んでも機能しません。

私がこれまで東北の企業でコンピテンシー評価の導入を支援してきた経験から、東北の中小企業に合った導入の考え方をお伝えします。


コンピテンシー評価とは何か——基本を押さえる

コンピテンシーの概念を簡潔に説明します。

コンピテンシーとは、「優れた業績を安定的に出している人材に共通して見られる行動特性」です。単なるスキルや知識ではなく、「どういう場面で、どういう行動を取るか」というパターンです。

例えば、「顧客志向」というコンピテンシーであれば、「顧客の要望を丁寧にヒアリングし、期待を超える提案をする」という行動として定義されます。「主体性」であれば、「指示を待たず、自ら課題を見つけて改善に取り組む」となります。

コンピテンシー評価は、これらの行動特性を評価項目として設定し、「その行動がどの程度実行されているか」をレベルで評価する仕組みです。


東北の中小企業にコンピテンシー評価が必要な理由

なぜ東北の中小企業にコンピテンシー評価が必要なのか。3つの理由を挙げます。

第一に、「成果だけでは測れない貢献がある」。中小企業では、数値で測定しにくい業務が多い。総務、人事、経理、品質管理——これらの職種の「成果」をどう評価するか。コンピテンシー評価は、数値化しにくい業務の貢献を「行動」という切り口で評価できます。

第二に、「行動の質を高めることが組織全体の成果につながる」。東北の中小企業は少人数で回しているからこそ、一人ひとりの「行動の質」が組織全体に大きく影響します。コンピテンシー評価を導入することで、「どういう行動が望ましいか」を組織全体に浸透させることができます。

第三に、「人材育成の指針になる」。コンピテンシーが定義されていれば、「今のあなたはこのレベル。次のレベルに到達するためには、こういう行動を増やす必要がある」と具体的な育成の方向性を示せます。

秋田のある建設会社の社長は、コンピテンシー評価を導入した理由をこう語りました。「売上の数字だけで評価していたら、若手の育成や安全管理をしっかりやっている管理職が報われない。数字には表れない『会社にとって大事な行動』を正当に評価したかった」。


コンピテンシーの設計——東北の中小企業に合った項目を選ぶ

コンピテンシー評価を導入する最初のステップは、「自社にとって重要なコンピテンシーを選ぶ」ことです。

大企業のコンピテンシーモデルには、20〜30項目が並ぶことがあります。しかし、東北の中小企業がこれを全て評価するのは非現実的です。項目が多すぎると、評価者の負担が大きく、形骸化の原因になります。

私が東北の中小企業に推奨しているのは、「5〜7項目に絞る」ことです。多くても8項目。自社の事業特性と組織文化に合った項目を厳選します。

私が東北の中小企業でよく採用するコンピテンシー項目は以下の通りです。

「顧客志向」:顧客のニーズを理解し、期待に応える行動をとる。 「チームワーク」:周囲と協力し、チーム全体の成果に貢献する。 「主体性」:指示を待たず、自ら考えて行動する。 「改善志向」:現状に満足せず、より良い方法を考え実行する。 「コミュニケーション」:必要な情報を適切に共有し、関係者と円滑に連携する。 「後輩育成」:後輩や部下の成長を支援する行動をとる。 「専門性」:自分の専門分野の知識・技術を継続的に向上させる。

全企業がこの7項目をそのまま使うわけではありません。製造業であれば「品質へのこだわり」や「安全意識」を加え、サービス業であれば「ホスピタリティ」を加えるなど、業種に応じてカスタマイズします。


コンピテンシーのレベル設定——具体的な行動記述が肝

各コンピテンシーに対して、レベルを設定します。私が推奨しているのは4段階です。

レベル1:基本的な行動ができている。 レベル2:自律的に行動し、安定した成果を出している。 レベル3:周囲に好影響を与え、チーム全体の行動レベルを高めている。 レベル4:組織をリードし、新しい価値を創造している。

ここで最も重要なのは、各レベルに「具体的な行動の記述」をつけることです。「チームワーク」を例にとります。

レベル1:チームの決定事項に従い、自分の役割を果たす。 レベル2:チームメンバーに積極的に声をかけ、協力を申し出る。困っているメンバーを自らサポートする。 レベル3:チーム内の意見の対立を調整し、合意形成をリードする。チーム全体の生産性向上のための提案を行う。 レベル4:部門横断的な連携を主導し、組織全体のチームワーク文化を醸成する。

この具体性がなければ、評価者は「なんとなくチームワークがある」という曖昧な評価をしてしまいます。行動記述があれば、「この行動をしているか、していないか」で判断できます。

宮城のある卸売業(従業員55名)では、全7項目のコンピテンシーについて各4レベルの行動記述を作成しました。合計28の行動記述。これを評価者全員に共有し、「この記述に基づいて評価してください」と依頼。評価のばらつきが大幅に減少しました。


コンピテンシー評価の運用——「評価のため」ではなく「成長のため」

コンピテンシー評価を運用する際に最も大切なのは、「評価のため」ではなく「成長のため」に使うという姿勢です。

評価面談で「あなたのチームワークはレベル2です」と伝えるだけでは不十分です。「レベル2からレベル3に上がるためには、こういう行動を意識してみてはどうでしょう」と、具体的な成長のアドバイスをセットにする。

岩手のある食品加工会社では、コンピテンシー評価の結果を「成長シート」に記入し、上司と部下が一緒に「次の半年で重点的に伸ばすコンピテンシー」を1つ選ぶ仕組みにしています。全項目を一度に伸ばそうとするのではなく、「今期は『主体性』を重点的に意識しよう」と絞り込む。半年後の面談で進捗を確認する。


東北の「控えめな文化」とコンピテンシー評価の調整

東北の企業でコンピテンシー評価を運用する際に配慮すべきなのが、東北の「控えめな文化」です。

東北の社員は自己評価が控えめになりがちです。「自分は大したことはしていない」と本人が思っていても、周囲から見れば十分にレベル3の行動をしている場合があります。

対策として、コンピテンシー評価では「自己評価」と「上司評価」の両方を行い、そのギャップを面談で話し合うことを推奨しています。自己評価が低すぎる社員には、「あなたの○○の行動は、レベル3に該当すると私は評価しています。もっと自信を持ってください」と伝える。

山形のある製造業の管理職は、「部下が自己評価を低くつけすぎるので、面談でいつも『もっと高くていい』と言っている」と話していました。東北の控えめさは美徳ですが、自己評価が適正でなければ成長の方向性を見誤ります。上司がコンピテンシーの行動記述に基づいて客観的に評価することで、この問題を緩和できます。


コンピテンシー評価と成果評価の組み合わせ

コンピテンシー評価だけで社員を評価するのは、バランスを欠きます。私が東北の中小企業に推奨しているのは、「コンピテンシー評価と成果評価の併用」です。

配分は職種や役職によって異なりますが、一つの目安を示します。

一般社員:コンピテンシー評価50% + 成果評価50% 管理職:コンピテンシー評価40% + 成果評価40% + 部下育成20% 新入社員(入社1年以内):コンピテンシー評価70% + 成果評価30%

新入社員はまだ大きな成果を出すことが難しいため、「望ましい行動がとれているか」を重視する。管理職は「自分の成果」だけでなく「部下の育成」も評価に入れる。

福島のある製造業では、この配分を導入した結果、「数字は出すが協調性がない社員」の評価が適正化されました。同時に、「数字は目立たないが、チーム全体の成果に貢献している社員」が正当に評価されるようになった。社員アンケートで「評価が公正になった」と回答した割合が、導入前の35%から導入後の72%に上昇しました。


コンピテンシー評価は「行動の辞書」である

最後に、私がコンピテンシー評価について大切にしている考え方をお伝えします。

コンピテンシー評価は、「この会社では、こういう行動が望ましい」という「行動の辞書」です。社員が「何をすれば評価されるのかわからない」と感じる状態は、コンピテンシーの行動記述によって解消されます。

東北の中小企業では、「背中を見て学べ」「言わなくてもわかるだろう」という文化がまだ根強い。しかし、「望ましい行動」を言語化して共有した方が、組織全体の行動レベルは確実に上がります。

コンピテンシー評価の導入は、「どういう人が、この会社で活躍するのか」を全員で考え、言語化し、共有するプロセスです。このプロセス自体が、組織の成長につながると私は考えています。

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