東北の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——誰かのキャリアを支援する前に、自分のキャリアと向き合う
キャリア・人事の成長

東北の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——誰かのキャリアを支援する前に、自分のキャリアと向き合う

#採用#評価#研修#組織開発#経営参画

東北の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——誰かのキャリアを支援する前に、自分のキャリアと向き合う

「社員のキャリア支援はやっているんですが、自分自身のキャリアについては考えたことがありませんでした。正直、このまま定年まで一人人事を続けるのかなと思うと、ちょっと不安になります」

宮城のある製造業で人事を担当している40代の方から聞いた言葉です。この方は、10年以上にわたって採用、労務、評価、研修——人事のあらゆる業務を一人でこなしてきた、いわば「一人人事のベテラン」です。しかし、自分自身のキャリアについては、ほとんど考えたことがなかったと言います。

私はこの話を聞いて、「人事担当者のキャリア」という問題は、東北の中小企業に特有の深刻さがあると感じました。東北の中小企業では、人事担当者は1〜2名であることがほとんどです。社内に人事の先輩や上司がいない。横のつながりも薄い。「人事のキャリア」について相談できる相手がいない。

この記事では、東北の企業で人事をしている方が、自分自身のキャリアをどう考え、どう行動すればいいかについて、具体的に考えてみたいと思います。


東北の人事担当者が抱えるキャリアの壁

東北の中小企業で人事を担当している方のキャリアには、いくつかの構造的な壁があります。

壁1:ロールモデルがいない

大企業であれば、人事部に先輩がいて、人事部長がいて、CHROがいる。自分の将来像を描くためのロールモデルが身近にいます。しかし、東北の中小企業で一人人事をしていると、「自分の先にどんなキャリアがあるのか」が見えにくい。

「このまま一人人事を続けるしかないのか」「人事の専門性を深めても、この会社では評価されないのではないか」——こうした漠然とした不安は、ロールモデルの不在から来ています。

壁2:専門性を磨く機会が限られる

東北の中小企業の人事は、採用も労務も評価も研修も、すべてを一人でこなす「ゼネラリスト」です。これは裏を返せば、「一つの領域を深く掘り下げる機会がない」ということでもあります。

大企業の人事であれば、「採用のプロ」「報酬設計のプロ」「組織開発のプロ」のように専門性を深めてキャリアを築くことができます。しかし、一人人事は広く浅くならざるを得ず、「自分の武器は何か」を言語化しにくい。

壁3:人事以外のキャリアパスが見えない

東北の中小企業では、人事からの社内異動先が限られます。大企業であれば人事から経営企画、事業企画、海外拠点長——といったキャリアパスがありますが、中小企業ではそもそもそうしたポジションがない場合が多い。

結果として、「人事を辞めるか、このまま続けるか」の二択になりがちです。


人事担当者のキャリアを考える3つの視点

これらの壁を踏まえた上で、東北の人事担当者がキャリアを考えるための3つの視点を提示します。

視点1:「何をしてきたか」ではなく「何ができるようになったか」

キャリアを考えるとき、多くの人は「職歴」を振り返ります。「○○会社で人事を10年やった」と。しかし、重要なのは「何をしてきたか」ではなく、「その結果、何ができるようになったか」です。

東北の中小企業で一人人事を10年やってきた人には、実はものすごいスキルセットがあります。

まず、経営者と直接対話し、経営課題を人事施策に落とし込む力。これは、大企業の人事部門で分業化された環境では得られにくい能力です。

次に、限られたリソースで成果を出す力。予算も人も少ない中で、採用し、育成し、組織を回す。この「少ないもので何とかする」力は、どの環境でも通用します。

さらに、労務から採用、評価、研修まで、人事の全領域を一通り経験している。これは「人事の全体像が見える」という大きな強みです。

まず、自分のスキルを棚卸しすることから始めてみてください。「何ができるようになったか」を10個書き出す。それだけで、自分のキャリアに対する見方が変わるはずです。

視点2:「社内でのキャリアアップ」だけがキャリアではない

東北の中小企業の人事担当者にとって、社内でのキャリアアップの道は限られています。しかし、キャリアは社内の肩書きだけで決まるものではありません。

たとえば、以下のような方向性があります。

社内で「経営のパートナー」としての役割を広げる方向。人事担当者から、経営企画や総務を含む「管理部門の責任者」にステップアップする。東北の中小企業では、人事・総務・経理を統括する「管理部長」ポジションは現実的なキャリアパスです。

社外に専門性を発信する方向。地域の人事コミュニティで登壇する、人事系のメディアで執筆する、地域の商工会議所で人事セミナーの講師を務める——こうした活動を通じて、「東北の中小企業人事の専門家」としてのブランドを築く。

人事コンサルタントや社会保険労務士への転身。東北の中小企業で人事の実務を一通り経験した人材は、人事コンサルティングの世界で重宝されます。「現場を知っている」というのは、この業界で最も強い武器です。

視点3:「今の仕事の質を上げること」がキャリアにつながる

キャリアアップというと「転職」や「昇進」を思い浮かべがちですが、今の仕事の中にもキャリアを広げる機会はあります。

たとえば、評価制度の運用をしている中で、「なぜこの制度はうまくいかないのか」を深く分析し、制度の再設計を提案する。これは「人事制度設計」というスキルの獲得につながります。

採用活動をしている中で、「応募者が来ない原因は何か」をデータで分析し、採用ブランディングを強化する。これは「採用マーケティング」というスキルの獲得につながります。

「やらされている仕事」を「自分で考えて改善する仕事」に変えることで、同じ業務の中からでもキャリアは広がります。


人事担当者のスキルを磨く具体的な方法

東北にいながら人事の専門性を高める方法を紹介します。

方法1:人事系の資格取得

キャリアコンサルタント、社会保険労務士、メンタルヘルス・マネジメント検定——こうした資格は、人事の専門性を体系的に学ぶ機会になります。

資格取得は「取ること」が目的ではなく、「学ぶ過程」に価値があります。体系的に学ぶことで、自分の経験を言語化し、整理することができます。

仙台には資格試験の対策講座を提供する学校もあり、通学しながら学ぶことも可能です。オンライン講座も充実しているので、東北の他の地域にいてもアクセスできます。

方法2:地域の人事コミュニティに参加する

仙台を中心に、人事担当者が集まる勉強会やコミュニティがいくつか存在します。こうした場に参加することで、同じ悩みを持つ仲間とつながり、自分のキャリアについて相談できる関係を築くことができます。

東北の人事担当者の多くは「社内に相談相手がいない」という孤立感を抱えています。社外に仲間を作ることは、キャリアの選択肢を広げるだけでなく、精神的な支えにもなります。

方法3:経営の視点を学ぶ

人事のキャリアを広げる上で最も効果的なのは、「経営の視点」を身につけることです。財務諸表の読み方、事業戦略の基本、マーケティングの考え方——こうした知識は、人事が経営者と対等に議論するために不可欠です。

東北の中小企業の人事担当者は、経営者の近くで仕事をしているという大きなアドバンテージがあります。経営者の判断基準や事業への考え方を間近で学べる環境にいる。この環境を意識的に活用し、「経営がわかる人事」になることを目指す。


人事担当者のキャリアプランを立てる——3年・5年・10年

具体的にキャリアプランを立てる方法を紹介します。

3年後の目標設定

まず、3年後に「どんな人事担当者になっていたいか」を具体的に描きます。

たとえば、「経営者に人事データを使って提案できるようになる」「人事制度を自分で設計・運用できるようになる」「地域の人事コミュニティで登壇できるレベルになる」——このように、具体的なスキルや行動で目標を設定します。

5年後のキャリアの方向性

5年後には、自分のキャリアの方向性を決めている状態を目指します。「この会社で管理部門の責任者を目指す」「人事コンサルタントとして独立する」「別の会社の人事責任者に転職する」——方向性は一つでなくてもいい。複数のシナリオを持っておくことが大切です。

10年後の「ありたい姿」

10年後は、具体的な職位やポジションよりも、「どんな働き方をしていたいか」「どんな価値を提供できる人でありたいか」を考えます。

「東北の中小企業の人と組織の課題を解決できる人」「経営者と対等に議論できる人事のプロ」——こうした「ありたい姿」は、日々の仕事の判断基準にもなります。


東北のある人事担当者の変化

福島のある機械部品メーカーで一人人事をしていた方の話を紹介します。この方は入社以来15年間、人事を一人で担当してきました。40代半ばで「このままでいいのか」と不安を感じ、キャリアについて考え始めたそうです。

まず、自分のスキルの棚卸しをしました。すると、「採用から労務まで全部一人でやってきた」「経営者と直接やり取りしてきた」「社員の相談に乗り続けてきた」——自分では当たり前だと思っていたことが、実は希少な経験だと気づいたそうです。

次に、仙台の人事コミュニティに参加し始めました。大企業の人事担当者と交流する中で、「一人人事の経験は、大企業の人事にはない強みだ」と言われたことが転機になりました。

その後、キャリアコンサルタントの資格を取得。社内では、社員のキャリア面談の質が格段に上がり、経営者からも「社員の定着に貢献してくれている」と評価されるようになりました。社外では、地域の商工会議所で人事セミナーの講師を依頼されるようになり、「東北の中小企業人事」としての新しい活動の場が広がったそうです。

この方が言っていた言葉が印象的です。「自分のキャリアと向き合ったことで、社員のキャリア支援も変わりました。自分が自分のキャリアを本気で考えていないのに、社員のキャリアを支援するなんて、おこがましかったなと思います」。


会社として人事担当者のキャリアを支援する

ここまでは個人としてのキャリアの考え方を述べましたが、会社として人事担当者のキャリアを支援することも重要です。

東北の中小企業の経営者に知っていただきたいのは、「人事担当者が成長すれば、組織全体が成長する」ということです。人事担当者のスキルアップに投資することは、採用力の強化、定着率の改善、組織力の向上——すべてにつながります。

具体的な支援として、外部研修への参加を支援すること。人事系のカンファレンスへの参加費を会社が負担する。資格取得のための学費補助を行う。他社の人事担当者との交流を推奨する。

こうした支援は、金額的には大きなものではありません。しかし、人事担当者にとっては「会社が自分の成長を応援してくれている」という大きなメッセージになります。


自分のキャリアに向き合うことが、人事としての第一歩

最後に、東北の企業で人事をしている方に伝えたいことがあります。

人事の仕事は、人のキャリアを支援する仕事です。しかし、自分自身のキャリアに向き合っていない人が、他者のキャリアを支援することはできません。

「自分はこのままでいいのか」と感じたなら、それはキャリアと向き合うタイミングです。まず、自分のスキルを棚卸しすること。次に、社外に仲間を作ること。そして、3年後の目標を設定すること。

東北の中小企業で一人人事をしている方の経験は、自分が思っている以上に価値があります。その価値を自覚し、さらに磨いていくこと。それが、人事担当者自身のキャリアを切り拓く第一歩になると私は考えています。

0

人事の知見が集まるコミュニティで、実践知を学びませんか?

人事図書館は、人事のプロフェッショナルが集まる学びのコミュニティです。

関連記事

東北の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——「誰のキャリアも支援する人事が、自分のキャリアだけは後回しにしている」問題
キャリア・人事の成長

東北の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——「誰のキャリアも支援する人事が、自分のキャリアだけは後回しにしている」問題

社員のキャリア面談をしながら、自分自身のキャリアについては何も考えていないことに気づきました。採用、評価、給与計算、社会保険——日々の業務に追われて、自分がどこに向かっているのかわからない

#1on1#エンゲージメント#採用
東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来
キャリア・人事の成長

東北の企業が「これからの人事」を考えるための羅針盤——100本の記事の先にある、東北の人事の未来

この記事は、東北の人事をテーマにした連載の100本目です。第1回から読んでくださっている方もいれば、この記事が初めての方もいるでしょう。いずれの方にも、この記事では東北の企業が、これからの人事をどう考えていくべきかを、私なりの視点でお伝えしたいと思います。

#採用#評価#研修
東北の企業が副業・兼業制度を導入して人材の幅を広げる方法——「うちの社員が外で働く」ことへの不安を乗り越えて
キャリア・人事の成長

東北の企業が副業・兼業制度を導入して人材の幅を広げる方法——「うちの社員が外で働く」ことへの不安を乗り越えて

副業解禁?うちみたいな50人の会社で、社員が他で働き始めたら、うちの仕事に集中してくれなくなるんじゃないですか

#採用#評価#経営参画
東北の企業が「社内公募制度」で人材の適材適所を実現する方法——「会社が決める配置」から「自分で選ぶキャリア」へ
キャリア・人事の成長

東北の企業が「社内公募制度」で人材の適材適所を実現する方法——「会社が決める配置」から「自分で選ぶキャリア」へ

うちの若手がやりたい仕事がここにはないと言って辞めていきます。でも、実は社内に彼が活躍できるポジションがあったんです。彼がそれを知らなかっただけ。私たちがそれを伝えなかっただけ

#エンゲージメント#採用#評価