東北の企業がテレワークとオフィスワークのハイブリッド型を設計する方法——「全員出社」でも「完全リモート」でもない第三の道
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東北の企業がテレワークとオフィスワークのハイブリッド型を設計する方法——「全員出社」でも「完全リモート」でもない第三の道

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東北の企業がテレワークとオフィスワークのハイブリッド型を設計する方法——「全員出社」でも「完全リモート」でもない第三の道

「コロナが明けて、全員出社に戻しました。でも、若手が『テレワークできる会社に転職したい』と言い始めていて。かといって完全リモートにすると、工場の現場組との不公平感が出る。どうすればいいんでしょうか」

宮城のある製造業の人事部長からの相談です。私はこの悩みが、東北の企業にとって非常に切実な問題だと感じています。

東京の企業であれば、「フルリモートOK」を打ち出すことで採用力を高められます。しかし、東北の企業の多くは製造業、建設業、サービス業など、現場での物理的な仕事が中核です。全員がリモートワークできるわけではない。一方で、管理部門やエンジニアなど、リモートで業務が可能な職種もある。

この「リモートできる人」と「リモートできない人」が同じ組織にいるとき、どうハイブリッドな働き方を設計するか。ここに東北の企業ならではの難しさがあります。

私がこれまで東北の企業でハイブリッドワークの導入を支援してきた経験から、具体的な設計方法と運用のポイントをお伝えします。


東北の企業にとってのハイブリッドワーク——なぜ今考えるべきか

東北の企業がハイブリッドワークを考えるべき理由は、主に3つあります。

第一に、「採用力の強化」。東北の中小企業が首都圏の企業と人材を取り合う時代です。特にITエンジニアや管理部門の人材は、リモートワークの有無が就職先選定の重要な基準になっています。「テレワークできません」の一言で、応募者の半数を失う可能性があります。

仙台のあるIT企業のデータです。求人に「テレワーク可」と記載したところ、応募者数が前年比で1.8倍に増加しました。特に、首都圏からのUターン・Iターン希望者からの応募が3倍になった。ハイブリッドワークの有無が、東北の採用力を左右する時代になっています。

第二に、「定着率の向上」。子育て中の社員、介護を抱える社員、通勤に1時間以上かかる社員——こうした社員にとって、週に数日でもテレワークが選択できることは、「この会社で働き続けたい」と思える大きな理由になります。

山形のあるサービス業では、管理部門に週2日のテレワークを導入した結果、育児中の女性社員の離職率がゼロになりました。以前は年間2〜3名が「子育てとの両立が難しい」として退職していた。テレワーク導入のコスト(ノートPC追加購入・VPN設定)は約80万円。一方、退職による採用・育成コストは1名あたり150万円以上。投資対効果は明白です。

第三に、「事業継続性の確保」。東北は自然災害のリスクが高い地域です。大雪、地震、台風——こうした事態でも一部の業務を継続できる体制があることは、経営のリスク管理として重要です。


ハイブリッドワークの設計原則——3つのルール

私が東北の企業にハイブリッドワークを設計する際に提案している「3つのルール」があります。

ルール1:「職種別に設計する」。全社一律のルールではなく、職種の特性に応じてテレワークの可否・頻度を設計します。製造現場の作業者にテレワークを強制するのは不可能ですし、管理部門を毎日出社させる必然性も薄い。

ルール2:「公平性と納得感を両立させる」。テレワークできない職種の社員に不公平感を与えない設計が必要です。「あの人たちは家で仕事して楽していいな」——この感情は、組織を分断します。

ルール3:「成果で管理する」。テレワーク日の管理を「勤務時間」ではなく「成果」で行う。「8時間パソコンの前に座っていたか」を監視するのではなく、「期待された成果を出したか」で評価する。


職種別テレワーク設計の具体例

私が東北の企業で実際に設計した職種別テレワークモデルを紹介します。

ある宮城の製造業(従業員150名)の例です。

「製造部門(70名)」:原則出社。工場での作業が中心のため、テレワークの対象外。ただし、製造部門の管理職(5名)は、書類作成やデータ分析の業務に限り、月2日のテレワークを許可。

「営業部門(30名)」:週3日出社+週2日テレワーク。出社日は火曜と木曜に統一し、チーム会議と取引先訪問に集中。テレワーク日は提案書作成、見積作成、電話フォローに充てる。

「管理部門(20名)」:週2日出社+週3日テレワーク。出社日は月曜と水曜に統一。経理処理、給与計算など出社が必要な業務を集中的に処理。テレワーク日はデータ入力、分析、資料作成に充てる。

「IT部門(10名)」:週1日出社+週4日テレワーク。出社日は金曜に統一し、ハードウェア保守と対面での打ち合わせに充てる。

「経営陣(5名)」:原則出社。ただし、出張や外部会議の日はテレワークに切り替え可能。

この設計のポイントは、「職種ごとの業務特性に合わせている」こと。全社一律ではなく、各職種が最も生産性を発揮できる形を追求しています。


不公平感への対処——現場組と管理組の溝を埋める

ハイブリッドワーク導入で最も懸念されるのが、「テレワークできる人」と「できない人」の間の不公平感です。

私が東北の企業で実践している対処法を紹介します。

第一に、「テレワークできない職種への代替メリットの提供」。テレワークは「働き方の柔軟性」の一形態にすぎません。テレワークができない製造現場の社員に対しては、別の形で柔軟性を提供する。例えば、「時差出勤制度」(始業時間を7時〜9時の間で選択可能)、「有給取得の優先権」(テレワーク不可職種は有給取得時に優先的にシフト調整する)、「現場手当」の新設。

秋田のある建設会社では、テレワーク導入と同時に「現場作業手当(日額500円)」を新設しました。金額は大きくありませんが、「テレワークできない人にも会社が配慮している」というメッセージが伝わります。

第二に、「制度の理由を丁寧に説明する」。「なぜ管理部門はテレワークできて、製造部門はできないのか」を、全社ミーティングで経営者が説明する。「業務の特性上、現場での作業が必要な職種にはテレワークが適用できない。しかし、現場の仕事に敬意を持っている。だからこそ、別の形で働きやすさを提供する」——この説明があるかないかで、現場の受け止め方は大きく変わります。

第三に、「ハイブリッドの恩恵を全員で共有する」。テレワークによって管理部門の生産性が上がり、その結果として会社全体の業績が改善すれば、その恩恵は全社員に還元される。この論理を数字で示し、「ハイブリッドワークは一部の人のための制度ではなく、会社全体のための仕組みです」と伝える。


テレワーク日のマネジメント——「見えない部下」をどう管理するか

テレワーク日の部下をどう管理するか。東北の管理職から最も多く聞く不安です。

私が推奨しているのは、「マイクロマネジメントをやめて、成果管理に切り替える」ことです。

具体的には、以下の3つのルールを設けます。

ルール1:テレワーク日の始業時に、その日の「やることリスト」をチームのチャットに投稿する。3〜5項目程度。これにより、上司は「部下が今日何をやるつもりか」を把握できます。

ルール2:テレワーク日の終業時に、「やったことリスト」を投稿する。やることリストと対比して、「できたこと」「できなかったこと」「翌日に持ち越すこと」を報告する。

ルール3:テレワーク日であっても、チーム内のコミュニケーションツール(Slack、Teams等)は常時接続。急ぎの相談があれば、すぐに連絡が取れる状態にする。ただし、「常に即レスしなければならない」わけではない。集中作業の時間帯は「集中モード」として、1〜2時間は返信が遅れてもOKというルールにする。

仙台のある商社では、このルールを導入した結果、テレワーク日の生産性がオフィスワーク日と同等以上であることが確認されました。特に、「提案書の作成」「データ分析」「レポート執筆」といった集中作業は、テレワーク日の方が生産性が高いというデータが出ています。オフィスでは電話や来客で作業が中断されるため、集中を要する業務はテレワーク日に回す方が効率的です。


コミュニケーションの設計——「雑談の消失」にどう対処するか

ハイブリッドワークで失われがちなのが、「オフィスでの雑談」です。

「廊下ですれ違ったときの会話」「給湯室での情報交換」「昼食時の何気ない会話」——これらのインフォーマルなコミュニケーションが、チームの連帯感や情報共有に大きな役割を果たしています。テレワークが増えると、この「偶発的なコミュニケーション」が減る。

私が東北の企業に提案しているのは、「意図的に雑談の場を作る」ことです。

第一に、「出社日の活用」。全員が出社する日を「コミュニケーション重点日」と位置づけ、チームランチやチーム会議を集中的に設定する。出社日はメールや資料作成ではなく、「対面でしかできないこと」に時間を使う。

第二に、「オンライン雑談タイム」。週1回15分の「バーチャルコーヒーブレイク」を設定する。議題なし、目的なし、ただ雑談する。山形のある企業では、金曜の午後3時に「おやつタイム」と称して15分のオンライン雑談をしています。「今週末は何するの?」「山形は雪がすごいですね」——こうした何気ない会話が、テレワーク組の孤立感を防いでいます。

第三に、「季節イベントの維持」。東北の企業の強みである「季節行事」——花見、芋煮会、忘年会——を、ハイブリッドワーク下でも維持する。年に数回、全員が顔を合わせる機会を確保することで、組織の一体感を保ちます。


東北特有のハイブリッドワークの利点

最後に、東北の企業がハイブリッドワークを導入することで得られる、東北特有の利点について述べます。

第一に、「広域採用が可能になる」。東北6県は広大です。仙台の企業が秋田や青森の人材を採用しようとしても、通勤は現実的ではない。しかし、週1〜2日の出社であれば、新幹線通勤も現実的になります。実際、仙台のあるIT企業では、盛岡在住のエンジニアを「週1出社」で採用しています。新幹線代は会社負担ですが、仙台在住のエンジニアを採用するより給与が抑えられるため、トータルコストは変わらない。

第二に、「雪害・災害時のBCP」。東北の冬は大雪で交通機関が麻痺することが珍しくありません。ハイブリッドワークの体制があれば、大雪の日にテレワーク可能な社員は自宅で業務を継続できる。「大雪で全社休業」を避けられることの経営的価値は大きい。

第三に、「地域での暮らしの質の向上」。テレワーク日は通勤がなく、その分を家族との時間や地域活動に充てられる。東北で暮らす魅力——自然、食、コミュニティ——を日常の中で感じられる時間が増える。これが、「東北で働き続ける理由」を強化します。

ハイブリッドワークは、「全員出社」でも「完全リモート」でもない第三の道です。東北の企業の事業特性と地域特性に合った形で設計すれば、採用力の向上、定着率の改善、生産性の最適化——複数の経営課題を同時に解決する可能性を持っています。

大切なのは、「テレワークを導入するかどうか」という二者択一ではなく、「自社にとって最適な働き方の組み合わせは何か」を設計する視点です。その設計力が、東北の企業の人材競争力を決める時代が来ていると私は感じています。

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